四人組の旅人
俺とミストラルは結局、奴隷商を襲っていた四人組を助けることになった。
四人のうちの一人、両目を布で覆った少女に、存在がバレてしまったからだ。
助けを求められた時は驚いたぜ。
的確に場所を把握されてたからな。気配も消してたっつうのに。
◆◆◆
戦闘が終わった後、四人組のうち一人の男が声をかけてきた。
「助太刀感謝する。私はシンラ・レント。レントと呼んでくれ」
レントは、ミストラルがラルーナで着ていた浴衣と同じような作りの服を着ている。
確か、森人族の民族衣装とか言ってたような。あの時の服よりか簡素だが似ている。
見た感じ普人族と変わんねえが、レントは森人族なのかも知れねぇ。
「……別にいい。俺はラルジャン。横にいるのはミストラルだ。探索者を生業にしている」
ミストラルはいつものごとく仮面を着けていて、俺たちの会話には興味もないらしく、レントの近くで座っている少女の方を見ていた。
「そうか! 私たちは比武大会に参加するために、クリスタニア王国を目指している旅人だ。道中で違法奴隷商を見つけて、寄り道をしていた」
「奴隷商を襲ってたのはそういう訳か」
奴隷商ってだけでも気に食わねえのに、違法かよ。
殺っといて正解だったな。……いや、法で裁いて貰ったほうが良かったか? 死ぬより厳しい処罰が与えられたかも知んねえ……。それこそ奴隷落ちとかなぁ。
「盗賊だとでも思ったのかい? まあ、私でもあんな場面に遭遇したらそう思うかもね」
「……まあな」
にこやかなレントに図星をつかれ、ばつが悪く頭をかいた。
「あっちで皆を解放している二人は、ノアとハツセだ。二人とも優秀な私の仲間だよ。そこで休んでいるのは、君たちを見つけたサクヤ嬢。私たちの国では精霊術師として有名だったんだ」
人懐こいのか、警戒心が薄いのか。測りかねるが、レントは俺に、他の三人について詳しく教えてくる。
奴隷として捕まっていた人たちの対応をしている男二人と、ミストラルに見つめられ居心地の悪そうな少女。
「出会ったばかりの俺たちに、事情を話しすぎじゃねえか?」
つうか、サクヤが精霊術師なら、ヴァイゼが調べてくれた精霊石について聞けるかもな。
「いいんだよ。サクヤ嬢が警戒していないからね。君たちは怪しい者では無いってことだ」
レントが落ち着いた表情で言い放つ。
「随分信頼してるんだな」
仲間でもそこまで信じきれるのは珍しいぜ。
「精霊術師が言うことに間違いは無いからね」
「それなら、この魔石について……」
俺が懐から件の精霊石を取り出そうとした時
「レントさん! 攫われてきた人たちの身元が分かりました」
妙に耳慣れた声が、馬車の方から聞こえてきた。
「ありがとうハツセ! 全員の故郷が分かったのかい? 良かった」
俺たちに近づいてくる男の外見に目を疑う。
リダル!? いや、こんな場所にいるはずが無い。
「……ハツセだったか?」
「あ、協力してくれた方ですね? ありがとうございました」
リダルは以前の探索者仲間だ。リダルなら俺に対してこんな話し方はしないはず。
「……いや」
見れば見るほどそっくりだな。外見が似てると声まで似るのか……?
動揺が収まらねえ。
「レントさん、どうされますか? 良ければ私とノアさんの二人で、攫われた人たちを港町に連れて行きますが」
「助かるよ! ハツセは気が利くなぁ、ノアだとこうはいかないからね」
「そうですか……? では比武大会までにはクリスタニア王国に向かいます」
「ああ。よろしく頼む!」
リダル、いや、ハツセはレントと話した後、ノアと一緒に奴隷商の馬車を使い、俺たちから離れて行った。
◆◆◆
「君たちはどこに向かう予定なのかな? 良ければクリスタニア王国まで私たちと一緒に行こう」
この場にいるのが俺とミストラル、レントとサクヤだけになったからか、レントがこっちを伺いながら、陽気に聞いてくる。
「俺らの目的地もその国だ。せっかくの誘いだからな、一緒に行かせてもらうぜ」
ハツセや精霊石について教われればなお良しだ。
「心強いよ! ありがとう」
奴隷商との戦いで大活躍してたの知ってるぞ。
レントには、王侯貴族が習うような武術が染みついてるんだろう。それも実戦的な技術がな。
「それはこっちの言葉だ」
比武大会の優勝者はほとんど決まったようなもんだぜ。




