拠点確保[終]
なぜ俺は浮島にいるんだ。そもそも、浮島の種って、簡単に成長するもんなのか?
遙か上空に浮かんだ島なのに、普通に呼吸ができているのも不思議だぜ。
クルムやビリカが近くにいれば、すぐにこの疑問も解決するんだろうが、二人は「浮島の中央にある巨木でやる事があるから」と言って、俺とミストラルを放置して作業中だ。
「なあ、お前が元気になったのは良かったんだけどよ。逆に俺の体はどうなってんだ?」
知らん場所で目が覚めることにはある程度、耐性ができている。
しっかし、今みたいに外見が変化してたことは無かったんだ。
目覚めた瞬間から違和感はあったんだが、水盆で自分の外見を見たときは、驚きで一瞬頭が真っ白になった。
短かった銀髪が、これでもかというほど長くなっていて鬱陶しいし、体内の魔力は、魔石が無くても使えそうなほど渦巻いて、気を抜くと爆発しそうなんだ。
浮島の種の成長速度と、俺自身の変化。せめてどちらかの謎くらい解決したい。
「わらわがお主の魔力を貰うときに、勢い余って『竜結の儀』をやってしまったのじゃ。時間が経てば髪は元に戻り、魔力も安定するであろう。安心するがよい」
ちょっと待て……。
「そのなんたらの儀って、なんだ……?」
俺は獣人族だということに誇りを持っている。竜族になったとか言われたら洒落にならねえ!
「竜結の儀じゃ。これはのぅ……。竜と人を結びつける儀式なのじゃが、竜によっては『婚約』だという者もいる重要な儀式だの!『竜婚の儀』ではないから、お主はまだ人族じゃぞ! 多少体が頑丈になり、傷の回復は早まるであろうがな。あとは……風属性の魔法なら自由に行使できるじゃろう。空も飛べるのではないかの?」
それはもう、獣人族とかけ離れてねえか?!
空を仰いで、盛大にため息をつく。
◆◆◆
浮島の端で、下方を雲が流れていくのを、ミストラルと二人で見ていると、ビリカがクルムを引き連れてやってきた。
「待たせたわね! 作業が終わったわよ。喜びなさい! 名実ともにこの島は私たちの拠点になったわ!」
拠点ができたのがよほど嬉しいのか、ビリカは満面の笑みを浮かべている。
「ほとんど僕の力で安定させたんですけどね……。まあこれで、どこに居てもすぐにこの島に戻ってこれますよ」
クルムはビリカと反対で、目の下にクマができていたが、嬉しいのはビリカと同じらしい。
「……核と種を安定させるのは容易ではなかろうに。なかなかやるのぉ」
「手伝ってくれても良かったんですよ……?」
「信仰力はわらわと相性が悪いのじゃ。魔力と調和させただけ、ありがたく思うのじゃな」
ミストラルとクルムの会話的に、種に遺跡の核を吸収させたのか。どうやって?
「僕は少し休みます。起こさないでくださいね!」
「休むって、どこに行くんだ? 見渡す限り草原だが。仮小屋か」
俺が寝かされていた小屋は、休むには不向きだと思うけどな。
「巨木ですよ。木の洞で休むんです。これ、渡しておきますので、地上でもどこでも好きに行ってきてください。ビリカも連れて行っていいですよ」
そびえ立つ木を指さしてクルムが言う。
それと同時に羽飾りを渡してきた。何だこれ?
「この島に飛べる印です。その飾りを握り締めて想像したら飛べます」
俺の表情を確認したのか、クルムは簡潔に説明してくれた。
本気で疲れてんだな。これ以上引き留めるのは鬼畜の所業か。
「……なんですって?! 私も一緒に休むわ! 二人ともちゃんと戻ってきなさいよ」
クルムとビリカは言いたい事だけ言うと、島の中心地に向かって飛んで行ってしまった。
仮小屋に食料もあったし、しばらくのんびり過ごそう。髪が元に戻らねえと、街に顔を出せねえからなあ!
成り行きとはいえ、拠点ができたのはいいことか。




