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英雄とドラゴン  作者: ヒトミ
拠点確保
21/60

絹花の街ユリエール[完]

俺の意識は子どもの声、セタ坊とソワ嬢の小さな騒ぎ声で、徐々に覚醒した。


シホウの家か……?


「いつ起きる?」

「……大丈夫かな?」

「起きなかったらどおしよ」

「そんなのやだよ」


俺の顔を覗きながら、ヒソヒソと言葉を交わしていた二人。


「セタ坊、ソワ嬢。起きたから泣きそうになるのはやめてくれ」


声をかけると、目を潤ませて俺に飛びついてきた。


とりあえず二人の頭を撫でておく。


「起きた!」

「よかったよぅ」

「お姉ちゃんは起きないの」

「ずっとずっと寝てるみたい」


俺はどのくらい気絶してたんだ? セタ坊とソワ嬢の様子を見る限り、決して短くはないんだろう。


ミストラルはまだ寝込んでるのか。


「それは心配だな。俺が様子を確認してくるから、二人は親の元に戻ってな。起こしてくれてありがとよ」


寝台から抜け出し、二人が部屋から出るのを見送る。


「分かった」

「お兄ちゃんが元気になって嬉しい」


素直でいい子たちだよな。さて、ミストラルを見に行くか。


◆◆◆


部屋から出た途端、クルムとビリカに遭遇した。


ちょうどいい。今の状況がどうなってるのか聞くとしよう。


「あんた! 目が覚めたのね!」


「……安心しました」


俺の思考を読んだかのごとく、クルムが俺とビリカをもう一度部屋の中へと(うなが)し、ひと息ついたかと思うと、矢継(やつ)(ばや)に話し始めた。


「ラルジャンさんが気絶してから大変だったんですよ。僕だけじゃ貴方を運べなかったので、一旦街まで戻って探索者に助けを求めたんですから! 事後処理を手伝わされたり、頑張ったんですからね。ちなみに、貴方が寝込んでから丸一日以上経ってます。褒めてください」


クルムは身振り手振りを交えて訴えてくる。


「偉かったな。それで、遺跡の核はなんで街中にあったんだ?」


的確な説明ありがとよ。要求通り、心を込めて褒めておく。


遺跡の核が、ちゃんと遺跡の本体にあれば、あんな苦戦を()いられはしなかったはずだ。


俺の質問に対し、口を開いたのはビリカだった。


「ここからは私が説明するわよ! 遺跡の核はなんと、祭りで捧げ物になっていた魔石だったの! 採掘師のシュルツっていう男がね、珍しい魔石だと思って街長に献上したらしいのよ。それが豊穣祭っていう天神族に祈りを捧げる儀式を受けて、信仰力が()()ちて暴走? みたいな」


興奮気味に話すビリカ。


「不可抗力だったわけか」


偶然の積み重ねで起きた騒動だったんだな。


「そう、そうなの! それでね、ミストラルが何かしたら、急に遺跡の核から光が消えて、街の植物の成長も止まったのよ。……あ! だけどそれからミストラルの声が聞こえなくなって、今もまだ眠りについてるからどうしよう?」


そうだミストラル。あいつはなんで目覚めねえんだ?


◆◆◆


俺たち三人は、ミストラルが寝ている部屋にやってきた。


依然(いぜん)として起きる様子のないミストラル。


額に手をあてる。やっぱり熱はねえなぁ。


仁術師(じんじゅつし)を呼んでみるか?


ミストラルは遺跡の核を止める為に何かをした。


遺跡の核は、魔力を込めた攻撃で破壊できる。


核は破壊することで、俺たちが使える(たから)に変化するんだよな。


魔力枯渇……? ドラゴンに限ってそんなことねえか。


俺は知らず知らずのうちに、ミストラルの顔を覗き込んでいたようだ。


パチッと目を見開いたミストラルに、ガッと肩を掴まれ、抵抗する間もなく。


突然唇を奪われた……だと!?


「……っ!? は……?? ……ちょ」


待て? やめろ! 何だこれは、どんな状況だ!!


みるみるうちに体内の魔力が減っていくのを感じる。


待て待て! ふざけるなよ……、また魔力の枯渇で気絶だなんて無様な真似はしたくねえ!


ミストラルをバッと力ずくで引き剥がし、事なきを得たと安堵した瞬間、今度は首筋を噛まれ、見事に二度目の気絶を果たすことになった。


◆◆◆


俺の魔力を吸い取ることで、綺麗さっぱり元気になったミストラル。


逆にそのせいで滾々(こんこん)と眠りについていた俺は、いつの間にか成長していた浮島に連れてこられていた。


シホウの家族に挨拶もできなかったのが悔やまれるぜ。


落ち着いたらもう一度ユリエールに顔を出そう。

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