絹花の街ユリエール③
探索者協会を探して、夕方の街を歩く。
植物を栽培している畑が目立つな。シホウが言っていた絹花ってのを育ててんのか? 絹花の街って言われてんのも頷けるぜ。
広場まで出ると、少女像を中心に、祭りの準備が進められている。
捧げ物を置くのだろう祭壇や、出店が開かれると思われる飾り。
盛大な祭りになりそうだな。ミストラルも元気になるといいんだが。
広場を通り過ぎ、やっとお目当ての場所に着く。
街の情報が集まる場所は、探索者協会だ。依頼の状況で、だいたいの情報を知ることができる。
俺は躊躇なく協会の扉を開き中に入った。
◆◆◆
探索者たちのざわめきで、協会内は賑やかだ。
ざわめきは主に食堂から聞こえる。依頼を終えた奴らが、祝勝会か、残念会でもしているのだろう。
受付にはだらしない格好をした、厳つい男が座っていた。
予想外なんだが!? いやお前探索者だろ。ぜってえ受付をやる柄じゃねえ。
営業時間は過ぎてるってか? だとしても、襟を崩すのは無しだろ……。
「食堂は向こうだ」
いや俺は依頼を確認しに来たのであって、メシを食いに来たわけじゃないんだが!
「依頼はないのか?」
「これから依頼を受けるのか? 酔狂だな! 階級は?」
男はガサゴソと書類の束を取り出しながら聞いてくる。一応仕事はこなすんだなと変な部分に感心してしまう。
「S級だ」
言うと同時に探索者証を提示する。
「はあ!? ここは辺境だぞ……?」
俺の顔と探索者証を交互に見て、男は取り出した書類を手からばらまいた。
「辺境とか関係あるのか?」
飛んできた依頼書の内容をチラリと確認する。薬草採取、害獣駆除、街の清掃。ありきたりな依頼ばかりだな。
「関係……はねぇな。しっかし、S級向けの依頼なんざ存在しないんだわ、すまんな」
「いや、階級は関係なく、最近増えた依頼か、普段は見かけない珍しい依頼とかがあるのか知りてえんだ」
「それなら鉱山関係の依頼か、絹花関連の依頼があるくらいだぞ」
食堂の探索者から話を聞く方が有意義そうだな。
「ふぅん……。ま、ありがとよ。メシでも食って帰ることにするぜ」
◆◆◆
ざわめきの大きさからして、ある程度は予想してたが、予想を上回る繁盛ぶりに少し戸惑う。
「……シュルツが一山当てたってよ」
「羨ましいぜ。やっぱ採掘師は夢があるよな」
「違いねえ!」
「俺たちも採掘師に転向するか?」
「いや! この職も捨てたもんじゃねえだろ」
聞き耳を立て、ある程度情報を入手した俺は、三人で話している探索者達に声をかける。
「邪魔するぜ。ここの依頼はどんな感じだ?」
「見ない顔だな。流れ者か? ぼちぼちって感じだぜ。稼ぎたければ北の国に行けばいい。近々、比武大会が開かれるらしいからな」
「比武大会? んな大々的に参加者集めてんのか? ……きなくせえな」
武力に自信がある者達を集めてやることなんざ大体きまってる。大規模か小競り合いか分からねえが、近寄らねえ方がいい。
「あんたもそう思うか? 俺も金に困って無いなら、おすすめしないぜ」
「情報感謝する。これは情報料だ。酒の足しにでもしてくれ」
今夜の飲み代が浮く程度の貨幣を投げ渡し、三人組と別れる。
「ありがてえ!」
食堂から離れる俺に向かって、三人組が歓声をあげるのが聞こえた。
これから俺が渡した金で飲み明かすのだろう。
◆◆◆
豊穣祭当日。
俺はミストラルが眠っている部屋にきていた。
最初の数日は、そこまで心配してなかったが、ここまで目覚めないのは異常だ。
熱があるわけでは無さそうだが。
広場では祭りが始まったのか、人々の賑やかな声と、幻想的な音楽が聞こえてくる。
寝台の横で、椅子に腰掛け悩む。
ビリカとクルムには、せっかく祭りを開いているのだからと、広場に行かせたが、すぐ戻ってくるかもしれねえな。
『ラルジャン! 鉱山にゆくのじゃ! 遺跡化する!』
……は!? ミストラル?
『わらわはここで魔脈の調整を続けるが、なぜか上手くゆかん。とりあえず急ぐのじゃ!』
こんな切羽詰まった声は初めて聞いたな。鉱山だと? 遺跡か、万全の態勢で行かねえと。
ミストラルがどうやって俺に話しかけてるのかは謎だが、魔物が街に押し寄せたら取り返しがつかねえしな。
「行ってくる」
『信じておるぞ!』




