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英雄とドラゴン  作者: ヒトミ
拠点確保
16/60

絹花の街ユリエール①

ユリエールは、ロプトル帝国の首都を知っている俺からすると、こぢんまりとした街だった。


だが、外壁はしっかりしていたし、門番が睨みを()かせてもいたな。存外に発展しているらしかった。


俺たちはシホウのおかげで、門番に引き止められる事は無かったが、怪しいやつは街に入ることすらできねえだろう。


ビリカを誘拐しようとした賊たちは、門を通るときに引き渡した。


門番にはたいそう感謝されたが、俺たちは後が詰まるからと、早々に街中へと溶け込んだ。


てなわけで俺たちはいま、シホウの家に招かれ、歓待を受けている。


ちなみにシホウは、使用人を複数人抱えてたぜ。商人として成功してるんだな。


「兄ちゃん背たかーい! 肩ぐるまして!」


「お母さんと同じ眼してる……」


シホウの子どもだと紹介された双子が、俺を仰ぎ見てはしゃぐ。


俺に向かって両手を広げ、肩車を催促している方が、セタという坊主で、俺の眼を食い入るように見ている幼女が、ソワというらしい。


「セタ坊、ソワ嬢よりは高いだろうよ。お前たちの母親は俺と同じ人種か。珍しいな」


瞳孔が縦に長いのは獣人族の特徴だ。砂漠で暮らしてるのが一般的なんだがな。獣人狩りにでも()ったのか? ……ちっ、嫌な記憶を思い出しちまったぜ。


首をさすりながら、目を瞑る。


腰に片手を当て、深く息を()いた後、俺はセタを肩に乗せて、座敷を見渡した。


「あらやだ! お客様になんてことを。セタ! 降りなさい」


「えー。やだー!」


赤子を抱えながら、座敷の奥からやってきた、シホウの奥さんがセタを叱る。


「別に構わねえよ。気も紛れるしな。しっかし、シホウに三人も子どもがいるとは思わなかったぜ。奥さんも大変だな」


髪を掴んでくるセタ坊。降りまいと必死だな!


シホウの三番目の子どもは、母親の腕の中で、すやすやと寝息を立てている。


「ありがとうございます。主人たら、お客様を(ほう)って、どこにいるのかしら」


「さっき街長(がいちょう)とやらに呼ばれて、出て行ったばかりだぞ」


困り顔の奥さんに、俺はシホウの行方を知らせた。


「まあ。申し訳ありません」


「俺らは適当にやらせて貰うから、気にすんな」


食事も提供されてるし、泊まる部屋も二部屋、用意してくれたからな。


至れり尽くせりで、何も問題はねえ。


見てみろ、ビリカやクルムは、食事に舌鼓(したづつみ)を打ってるし、ミストラルは……なんだ? 寝てる……んだろうよ。


あれは寝てんのか?


「ミストラル? どうした」


食膳(しょくぜん)を前にしてミストラルは、ふらふらと頭を揺らしていた。


顔色が悪い気もする。


「ラルジャンかや? 気分が優れぬ。すまぬが、部屋まで……」


おいおい、目が虚ろじゃねえか! どうりで静かな訳だぜ。


「分かった。奥さんすまねえが、一旦抜けるぜ。セタ坊、ソワ嬢。また後でな」


俺はミストラルを抱え上げ、座敷を後にする。


「……空気が……脈……てるのかのぅ……」


ミストラルは部屋に着くまで、目をつぶりながら、ぶつぶつとうわ言を呟いていた。額に汗までかいている。大丈夫かあ?


「何かあったら誰にでもいいから、声をかけろよ? ビリカにも伝えておくからな」


俺はミストラルを寝台に寝かせた後、座敷に舞い戻った。

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