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英雄とドラゴン  作者: ヒトミ
拠点確保
12/60

森の中③

昨日に引き続き、道を歩く。


「そういや、クルムは翼隠せるのか?」


クルムに向かって問いかける。


「できますよ」


クルムはスッと翼を消した。


「ちなみに、(しるし)をつけた浮島にも転移できます! すごいでしょ?」


褒めろと言わんばかりだな。


「凄いな。いつかやってみせてくれ」

「二人とも静かにするのじゃ」


話していると、警戒するようなミストラルの声。耳を澄ませている。

意識を集中させると、近くで騒がしい音がした。


「人が争ってるのか……?」


木陰から、三人で音がする方を見る。



「……! 離しなさいよ! このバカ! 引っ張らないで、翼がとれちゃうでしょーー!?」

「大人しくしろ!」

「天神族なんて珍しい」

「見世物小屋に売ろうぜ!」


十四、五歳くらいの天神族の少女を、男たちがとりかこんでいた。瞬間、頭に血が上る。


「……ビリカぁ……?! むぐっ……」

「叫ぶでない」


横で二人が騒ぐ。俺はそれに構う余裕はなく。

男たちと少女の間に飛び出した。


子どもを誘拐しようとするなんざ、許せねぇ!


少女の翼を掴む腕をつかみあげ、投げ飛ばす。

「うわあ!」

その横にいる男を大剣の鞘で峰打ち。

勢いで、その横にいるやつを回し蹴り。

「ぎゃっ」「……ぐはっ!!」


少女を囲んでいた男たちは、おのおの悲鳴を上げ、倒れふした。


気絶した賊どもを樹に縛りつけた後、俺は呆気にとられていた少女に声をかける。


「大丈夫か?」

「あ、ありがとう。だけど私、助けてなんて言ってないわ! あれくらい、自分で対処できるわよっ!」


強がりかぁ? 震えてるぞ。


「ビリカ! 驚いたよ。なんでこんな所にいるの?」


少女がクルムを見る。


「……見つけたあぁぁ! あんたがどこかに行っちゃったから私がこんな目に合ったのよ! このバカぁぁ!」

「なんという理不尽」


クルムを指さした少女は、そのままクルムの元に駆け寄り頭突きした。


「クルムの知り合いか」

「僕を空から落とした元凶です」

「……それは、災難だったな……?」


少女はクルムと再会して落ち着いたのか、クルリと俺に向き直ると、胸をはる。


「私はビリセリカ! 天神族よ! 崇め奉るといいわ!!」


まぁた、濃いヤツきたなぁ……。


「俺は天神教徒じゃねえから、祈らねえよ」


「はぁ!? ありえない! 意味わかんない! これじゃ、力使えないじゃない!」


ビリセリカは地団駄を踏みながらわめく。

クルムが困り顔で、俺に頭を下げた。


「ビリカ、やめてよ。ラルジャンさんは僕の恩人なんだから。ていうかもしかして、ビリカ今能力使えないの?」


「使えなかったら何よ! またバカにする気? それなら受けてたつわよ!?」


「……だから無駄な事に能力を使うなって言ったのに……自業自得」


クルムがビリセリカに足蹴りを食らった。


元気な嬢ちゃんだな……。


「再会を喜んでいるとこ悪いが、そろそろ森を抜けるべきだと思うぜ」


賊どもも自警団か騎士団かどっかに引き渡さねぇといけねえ。


「そこな娘、ビリセリカとか言うたかの? どんな能力を持っておるのじゃ?」


静かだったミストラルが、扇でビリセリカを指し示す。


「あなた達には特別にビリカと呼ぶ権利を与えるわ! 泣いて喜びなさい!」


なんか嬉しくねえのはなぜだろうな?


「はよ申せ?」


鬼女の面をつけていて表情は分からないのに、声の低さで怒りが伝わってくる。


ビリカの偉そうな態度が逆鱗に触れたのか……?


「わ、分かったわよ! よく聞きなさい! 私が偉大なお父様から授かった力は洗脳よ!!」


せんのう、理解し難い単語が飛び出してきたんだが?


「ちょっと待て、洗脳ってなんだ? 思想改変でもするっていうのか?」


「え、洗脳を理解できないの!? しょうがないわね、いい? ……洗脳とは! 私が洗脳を人に使うと、その人は私が望んだ通りに動いてくれるようになる、偉大な力なのよ!!」


要するに、人を自分に都合がいいように操るってことじゃねえか!


「力がえげつねぇ……」


それで? 何かに能力を使ったから、今は使えねぇと。


「誰かに能力を使ったのか?」


「それよ! 今まさに私はそれで、困っているのよ。全く、誰が私の崇高な計画をじゃましたのよ!」


「騙されないでください。ビリカの計画って、全然崇高じゃありませんから!」


ビリカとクルムが同時に主張する。


信じられるのはクルムの方だな。異論は認めるぜ。だが、俺の勘はクルムが正しいと主張している。


「嬢ちゃん。どんな計画を実行して、じゃまされたんだ?」


低い声にならないように気をつけて、聞き出す。


「飛竜の卵を都市に持ち込ませて、都市が壊滅する時の人々の恐れという感情を手に入れる計画よ!」


ラルーナでのできごとが思い浮かぶ。


飛竜の卵、絹織物商人、商人の天神教徒である証。


「……嬢ちゃんが洗脳っつう能力を使ったのは、天神教徒の絹織物商人だったりするか……?」


俺が眉をしかめながらビリカを見つめると、ビリカはクルムにしがみついて叫ぶ。


「ちょっとクルム、何この人族、怖いんだけど。なんで私が洗脳した相手を当てられるのよ!? 実は天神族なの?! 読心能力(どくしんのうりょく)持ちの!」


その反応で、俺は確信をもった。


「そうなんだな?」


抑えきれず、低い声がでる。


「ひっ! な、何よ。け、喧嘩なら買うわよっ!?」


怒気のこもった俺の声にビリカは慄いたのか、いっそうクルムにしがみつきながら、震える声で強気な発言を返してきた。


「……嬢ちゃん。正直に答えてくれ。商人に洗脳っつう物騒な能力を使って、飛竜の卵をラルーナに持ち込ませたのは、嬢ちゃんなんだな?」


「そ、そんな低い声で聞かれても私はく、屈しないんだから!」


「ラルジャンさん。そうです。ビリカがやりました」


「クルム!!? 何答えてんの!? クルムの裏切りものおおぉ!」


クルムの返答で、この天神族の少女が、ラルーナでの騒動の元凶だったという事が確定した。


反省の色が見えないビリカに、俺はフツフツと湧いてくる怒りを抑え、静かに口を開く。


そこから俺の長い説教がはじまった。

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