森の中②
三人で森に入った。
しばらくは道もなく、鬱蒼とした森で、枝を斬りながら進んだ。
長いこと進むと、馬車一台分ほどの狭い道をみつけることができた。
「道があるな」
「人里があるということですね」
「そろそろ夜になりそうじゃ。今日は森で野営かのぅ」
夜の森は危険だ。ひらけた場所をみつけて、俺が見張りをするか。
道にそって歩いていくと、焚き火を消した跡がある場所をみつけた。野営地だ。
「今日はここで休むか」
「賛成です」
「そうじゃの」
三人で夕飯を準備し、寝る場所をつくると、空には星が瞬いていた。
焚き火をかこみながら、三人でとりとめのない会話をする。
「ミストラルさんって、人間種じゃないですよね」
「お主も違うじゃろうに。わらわは天神族は好かぬ……」
「……そんな。なんでですかぁ!」
クルムがおどける感じで叫ぶが、俺も気になる。因縁でもあるのか……?
「お主らは、自身の力を強めるためになんでもするからの。前時代の天神族はそれで天変地異を引き起こしたのじゃぞ!」
天神族そんなやばい種族なのかよ。前時代の記録は残ってねぇから、天変地異がどんなものだったのかは分かんねえな。
「まあ、それはそうかも……? で、でも、僕は違います! 僕ができるのは、天啓を与えることだけですから!」
納得すんのか。
「天啓ってなんだ?」
天神族の能力かなんかか?
「天啓は、人の祈りを聞いて、その願いを少しだけ叶えやすくする力です」
願いね……。迷子が家に帰りたいって願えば、それが叶うってことかあ?
「例えば、病気の人が、治りたいって願うと、僕が天啓を与えて、回復力が上がる! という感じです」
完全に治るわけじゃねえのか。俺が使う身体強化みたいな、強化系かね。
「中途半端じゃのう」
「……っ、ぐっさりきました。誰かを思いだしますね。いいんです! いつか完璧に叶える力を手に入れてみせるんで!」
クルムが立ち上がり、空に向かって片腕を振り上げ、力いっぱい宣言した。
「応援するぜ。よし、子どもは寝る時間だ。おやすみ」
「僕は子どもじゃありません……。少なくともラルジャンさんよりは生きています」
へぇ。天神族は長命種か。見かけじゃ歳が分からねえ。
「そうか。ま、見かけだと子どもだ。大人しく寝ときな」
その後もクルムは、文句を言っていたが、いつの間にか眠りについていた。
空から落ちてきた理由、聞くの忘れたな。ま、そこまで重要なことじゃねえだろ。
「ミストラル、前時代の天神族って何したんだ?」
「うむ、天神族の創造主、便宜上『神』の寵愛を手に入れるためにの、血で血を洗う争いをしたのじゃ」
顔を険しくしながら、ミストラルは語った。
「それで?」
「平和だった世界は壊れ、天神族の亡骸から魔物が発生し、今のような世界になったのじゃ。世界に残る遺跡は天神族の墓場なのじゃよ」
突っ込みどころが多いんだよ……! 対処しきれねえ。天神族から発生した魔物が、なんで人間種を襲うんだ……。
俺がルシオール、グレースたちと攻略した遺跡も、天神族の墓場だったのか。
「俺たちが攻略した、帝国の遺跡は、中に入るたび違う風景が広がる遺跡だった。ルシオールが出たり入ったり繰り返して、一番攻略できそうな世界を探し出し、紆余曲折を経て攻略したんだが、もしかして、遺跡の核が天神族の亡骸だったりするのか……?」
「そうじゃ」
うわぁ。遺跡の核とか、攻略の証拠として、みんなで皇帝に献上したぞ……。国宝として使われてるっぽいんだが?
「遺跡の核に、それぞれ力が宿ってるのは、元が天神族だから……」
「まあ、神の創造物じゃからの。そんな力が残っておってもおかしくないのぅ」
天神族が色々とやばい種族なことは、分かった。だが、これ以上は頭が追いつかねえ。
「天神族の話はこれでしまいだ。ミストラルも今日は休め。俺が見張りをする」
「すまぬな。夜中交代しようぞ」
「ああ。おやすみ」
交代するまで、焚き火を見つめながら過ごす。
幸運なことに、魔物に襲われる気配はない。
夜中、ミストラルと交代し、俺は朝まで眠りについた。




