森の中①
エピソードタイトル変更してます。旧「拠点確保」です。内容に変更はありません。
俺はいま、ミストラルに乗せてもらい、ラルーナから離れて、帝国のある大陸に逆戻りしている。
戻ろうとしているのには、訳があった。
飛竜襲来事件の後、グレースたちと会った時、アメリアの旦那、リダルの行方が分からないと二人が話していたからだ。
ルシオールは魔人族だから心配ないとして、リダルは普人族だからなあ。行方が分からないとなると心配だぜ。
つらつら考えていると、前方の上空から、なにかが勢いよく落ちていくのが見えた。
「なんだあれ?」
人型の鳥……、天神族かあ!?
「すまん、ミストラル! 前方に急いでくれ!」
「んむ? どうかしたのかや?」
「上空から、天神族が落ちてきてんだ!」
「天神族じゃと……? 気が乗らんのぉ」
「言ってる場合か!」
早くしないと、海に沈んじまうぞ!
やる気のなさそうなミストラルを急かす。
「仕方ないのぅ」
なんでこんな嫌々なのかは知らねぇが、動いてくれて良かったぜ。
海に落ちる前に受け止める。
「さすがに二人分の体重は重いのじゃが」
「すまん。近くに陸地はないか?」
周囲を確認すると、浜辺があった。
「あそこでいい!」
「人使いが荒いのではないかや?」
人使い……、竜使いの間違いじゃねえか……?
「落ちついたら礼する」
「そうかや! 楽しみにしておるぞ」
浜辺に降り立つと、ミストラルは人に変化した。
先程助けた天神族の様子を見る。
十四、五歳くらいの少年だ。
気ぃ失ってんなぁ。上空から落ちてきたのはなぜだ? 目覚めるまで待つしかねぇな。
「俺たち、元の大陸に戻ろうとしていたよなぁ……」
「うむ。お主が、リダル? という者のことが気になると言うたからの」
「なら、大陸の端のほうか」
「そうじゃな」
ロプトル帝国以外の場所にはあまり詳しくねぇんだよな。
とりあえず、人里を探してみるか。
浜辺の奥の方に森が見える。
この天神族が目覚めたら、あそこの森に向かおう。
しばらくすると、天神族の少年がピクリと動き、起き上がった。
「…………ったあ、ビリカのやつ、あんな思いっきり吹っ飛ばさなくてもいいじゃないか」
目覚めたばかりでよく喋る天神族だな……。
「大丈夫か? 空から落ちてきたが怪我はないか?」
声をかけると、少年はこちらを向く。
「助けてもらった感じですかね? 怪我はないです。ありがとうございます」
「怪我がねえなら安心だ」
落ちてきた理由がわかんねえな。まあ、後で聞けばいいか。
「あなたは天神教徒ですか?」
「違うな」
唐突だな。天神教徒だと何かあるのか?
「……。そうですか、すみません。それなら天神教徒がいる場所までご一緒させてもらってもいいですかね」
「かまわねぇぞ。で、お前の名前はなんていうんだ?」
一緒に行動するなら、名前くらいは分かってたほうが、やりやすいだろ。
「僕の名前はエラクルムです。クルムと呼んでください」
「クルム、しばらくよろしくな。俺の名前はラルジャンだ。あそこに立ってる女性はミストラルだぜ」
我関せずなミストラルは、少し離れた場所でなにかをいじっていた。
「ミストラル! そろそろ移動しようぜ! 何してるんだ?」
「魔石貝を見つけたのでな。魔石を取り出しておったのじゃ」
魔石ってその、でかい甲羅?から取れるのかよ。石だから鉱山から取れるもんだと思ってたぜ?
「どこにでも魔石ってあるのか……」
「いえ、ありませんよ。魔石は普通、鉱山から出てくるはずですから……」
俺のつぶやきに、クルムが反応する。やっぱおかしいよな。
「この魔石貝は、絶滅寸前なのじゃ。昔は沢山、生息していたんじゃがの」
絶滅危惧種なのかよ!
「自然に返してこい! 魔石があっても、魔石技師がいないと無用の長物なんだぞ!」
「もう遅いわ。取り出し終わっておる」
絶滅危惧種なのに、いま一匹この世から消え去ってしまったぜ……。すまん魔石貝。魔石はミストラルが大切に使うだろうよ……。
「ほれ、ラルジャン。あげるでな。街についたら好きなように加工してもらうとよい」
自分で使うんじゃないのか! まあ、いまはただの魔石だが、あって困る物でもない。
投げられた魔石を受け取る。
「もらっとく。それじゃ、まずはあそこの森に向かうぞ」




