【福岡県民向け?】方言丸出しで異世界に行ったら、言葉が通じなかった件
――――まじ?
目の前に広がる、明らかな異世界。
西洋風ののどかな街並み、歩く人々はゴツい背広とゴツいドレス姿がほとんど。
福岡の中心地、博多。私は、そこにいたはずだ。
天神とどっちが中心かとか問題は横に置く。そして、個人的には博多駅の方をよく使うから、博多が中心ということにしておく。
「君、こんなところで、そんな格好で何をしているんだい?」
テレビアニメで見るような軍服姿の壮年の男に話しかけられた。『ザ・騎士』というような格好をして、腰には剣をぶら下げている。
こっちが『そんな格好でなんばしとるとですか?』と聞きたい。
「あー、よーわからんとですけど、博多駅からバスセンターに行こうとしたら、横断歩道に車が突っ込んできたとですよ。んで、気が付いたらここに立っとりました」
「……………………ん?」
壮年の男性が困ったような笑顔でコテンと首を傾げた。なんかちょっとかわいい。
「……えへ?」
取り敢えず、笑って同じように首を傾げてみた。
男性は、少しだけうねった金色の短髪をワシワシとかき混ぜ、「参ったな」と呟いた。
何が参ったんだろうなぁと男性を見つめていると、目が潰れるほどの美青年が薄青ががったロングヘアーをサラサラと靡かせて近付いてきた。
「隊長、待ち合わせの場所はここではありませんよ。何をナンパしているんですか」
「いや、変な格好をした女児を見つけてな。保護をしようと思ったんだか……言葉が微妙に違ってな聞き取りづらいんだ」
――――へ? でも、標準語で聞こえとるっちゃけど?
「言葉、通じとりますよ?」
「ん? あぁ、リスニングはちゃんとできるのか。よく勉強したな」
頭を撫で撫でされた。どうやら子供扱いされているようだ。
あれか? 身長が一五〇しかないからか? この人たち、一八〇超えてそうだから、対比で余計に小さく見えてるのかもしれない。
それに、周りを歩いてる女の人たちは私より二十センチ近く高そうだし。それも勘違いを手助けしてそうだ。
「親はどこだい?」
「親? 柳川におりますけど?」
「ヤナガワ? 聞いたことあるか?」
二人ともあの柳川を知らないようだった。かなり有名な市のはずなんだけれど。川下りとか。やはりここは異世界で間違いない。
「親は遠かとこにいるとです。ウチ、出稼ぎに来たとですけど……」
何かうまいこと誤魔化せないだろうか。
あわよくば保護してくれないだろうか……などという腹黒い魂胆の元、適当に話していたら、本当に保護してもらえることになった。
「おはよう! 今日も頑張ってるな」
「はざまーす!」
騎士団に住み込みでお掃除や雑用のお仕事をもらって、約半年。
団員さんと話しつつ標準語に頑張って切り替えていこうとしていたのだけれど、なぜか全員に「そのままがいい」と言われて、方言丸出しで話すことになった。
ちなみに私の方言は様々な地域のが混ざっている。何なら佐賀県のも混ざっている。
たぶん長年いろんな地域で働いていたせいだろうなぁ。などと思いつつ、私を保護してくれた隊長の執務室のドアをノックした。
「ロイ隊長、失礼しまーす」
「おー」
掃き掃除、拭き掃除、隊長が乱雑にしている団服や書類の整理。それらを終わらせて隊長にお茶を出す。
「今日は紅茶にしたっちゃけど、甘かお菓子も食べるね?」
コーヒーの時は、甘めのお菓子を一緒に食べるのが隊長の好み。甘めの飲み物の時は、お菓子はあんまり食べない。
味覚はちょっと子供に近いらしい。そんなとこが可愛い。
「んー。なんの菓子だ?」
「ジンジャークッキー!」
「もらおう」
「はーい」
紅茶とクッキーを渡すと、隊長が頭を撫で撫でしてくれた。
この金髪ちゅる毛の隊長、現在三六歳の男盛りである。たぶん。
漏れ出る精悍な色気にちょいちょいアテられている。
なぜならば! 私は三十歳! 隊長、どストライクだから!
「お前はなんでも出来るなぁ。こんな優秀な子供は初めて見たぞ」
「…………ほんなこつばゆーたら、隊長腰抜かしそ」
「ん? ほんな? 腰は怪我していないが?」
「なんもなかでーす!」
撫で撫でし続ける隊長を見上げつつ、にっこりと笑う。
いつか、この人に私の年齢を伝えてみよう。
そうしたらどんな反応をするだろうか?
怒るかな? 腰抜かすかな? 真っ赤になったりするかな?
「カリナ、顔があくどいですよ」
「失敬!」
隊長と出逢った直後に来た、薄青ががったロングヘアーの美青年。コイツは私の年齢に気づいていそうである。
視線が、なんとなく、そう感じる。
実はロリ○ンか、ワンチャンでBでLな方向もあるかも?
ワンチャンあるなら、二人の絡みを…………をっと、本音が。
取り敢えず、今日も精悍で可愛い隊長を愛でながら、騎士団のお掃除がんばるぞー!
―― fin ――
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