一話・転生不死王
ファンタジーの世界に憧れた事は有りませんか?
剣、魔法、冒険にミステリー、僕たちにとってのファンタジーは物語の登場人物からすれば幻想ではなくリアルな訳で、ファンタジーとしての基礎知識は有っても実際に投げ込まれたらどんな風になるのか?
そんな感じで読んでいただけたらなと思います。
「ああ、綺麗だ・・・」
そんな事をつぶやきながら小川を眺めている。
「夢にしては随分とリアルだな」
しばらく皮手袋に包まれた自分の両掌を見つめた後適当に川沿いに歩き出す、「夢ならその辺歩けば何かあるだろう」そんな安直な考えからだった。
「え?」
間の抜けた声を上げる視線の先では深い青色の体をした半魚人が数体、石の斧で獣の肉を乱暴に切り分けていた。
「うわ、マジか、ファンタジー系の夢なんて生まれて初めてだな・・・ちょっと話しかけてみようかな、どうせ夢だし」
好奇心からそそくさと近づき軽く手を上げ声をかけた、直後半魚人達が振り向きすぐさま奇声をあげだした。
「うわ、何だよ!? そんなに騒がなくてもいいじゃないか、ちょっと話がしたいだけ・・・」
半魚人達を静止しようと突き出した手がおかしな方向へと曲がり激痛が走る、言葉にならない悲鳴を上げながら腕を抑えて突っ伏した。
「ち、ちくしょぉ・・・何しやがる・・・」
そう言いながら半魚人達を睨んだ、一際でかい半魚人が石斧で誠二の腕を折ったのだ。
しかし半魚人達も落ち着かない様子だ、巨体の半魚人を残して他の半魚人達は獲物を放り出して我先にと川へと逃げ出した。
巨体の半魚人は手負いの誠二の出方をうかがうようにジリジリと間合いを詰めて来る、ゆっくりと石斧を上段に構え頭を狙っているのが解る。
「くそぉ・・・最悪の夢だ、ファンタジー系なんて二度とごめんだ!!」
誠二の声に驚き焦って石斧を振り下ろす、寸でのところで狙いを外し石斧が地面を深々とえぐった。
必死に体を転がして立ち上がり逃げ様とするが折れた腕の激痛が誠二の行動を鈍らせる、半魚人は地面に刺さった斧を力任せに引き抜き逃がすまいと足目がけて振り回す。
どうにかかわしたがバランスを崩して転倒、すかさず胴を踏みつけ動きを封じられた。
半魚人が奇声を上げながら斧を頭上に振り上げた。刹那、閃光が走り半魚人の動きが止まる。
数秒の硬直の後、斧が手から離れ地面に落ちると同時に半魚人の体が力無く崩れた。こめかみには銀色に光る矢が刺さっている。
誠二は這いずり獣の死骸に寄りかかって座り半魚人の骸を見下ろす。直後、人の声が聞こえホッと胸を撫で下ろした。
「助かった・・・」
駆け寄って来た女が早口で何か言っている、意識が朦朧としているせいか誠二には聞き取れない。
「ありがとう、助けてくれて」
そう言いながら女の方を向く、目を合わせた女は急に血の気が引いて行き後ずさり始めた。
「え、どうしたの?」
その時ふと地面に出来た獣の血だまりに映る自分の姿が見えた。
「な、え?」
言葉を失った、灰色のドクロの顔に眼の変わり赤黒い光が二つ浮かんでいる。
何が何やら分からずに自分の顔に触れているとゴッと後頭部に鈍い音と痛みが走り意識が遠のく、血だまりに顔から突っ込み目の前が真っ暗になる。
薄れていく意識の中で数人の声が聞こえた・・・
・・・どれくらいの時間がたったのか、視界がはっきりしないが誠二は気を失う前に聞いた声で目が覚めた。
「嘘だろ・・・まだ夢の続きかよ・・・」
誠二は心底そう思った。
「お、あいつ起きたぞ」
「どれどれ、何か喋れっかな?」
目の前に立った男たちを見て誠二は目を丸くした、黄緑色の鱗肌に金色の眼、長い尻尾のリザードマン腰には曲刀を携えている。そして白と黒のミノタウロスが一体ずつ。
「おい、お前話せるのか?」
白のミノタウロスが顔を近づけて誠二に問いかける。
「な、何だよ、僕をどうしようって言うんだ!?」
誠二が喋るのを見てリザードマンが驚く。
「おいおいカタリナの言った通りだ、このリッチ本当に喋ったぞ!」
「ああ、だが何言ってるのか分からねー、古代言語なのか?」
黒いミノタウロスが顎髭をなでながら首をかしげる。
「でもよ、本当にこいつキング・リッチなのか? ただのスケルトンだろ、サハギン何かにやられそうになってたって聞いたぞ?」
「まーな、フードで顔が隠れていたから人間だと勘違いして助けたってカタリナも言ってたしな」
言葉が分からない誠二は三人の会話を聞いてより不安が高まる、どうにか逃げ出す手をと周りを見回した。
よく見れば自分は石で出来た椅子に座らされているだけで拘束されている訳でも無い、出入り口は三人が立っている所だけ、それ以外には何も無い八角形の部屋だ。
「一か八かやるしかないか・・・」
意を決してゆっくりと身構える、誠二の考えはミノタウロスの股の下を抜けて一気に走り去る事だ。
「あーあー、無駄な事はやめておけい」
しゃがれた声とともに入り口から誰か入って来た、言葉は解らないのに何故か誠二は自分に話しかけられている事だけは解った。
「言葉が通じとらんのは分かっとるが一応伝えとくわい、その椅子はリッチの骸を安置する棺と同じ作りじゃ、お前さんの意思ではそこから離れられないんじゃよ」
そう言いながら魔術師風の格好のゴブリンが誠二の目の前に歩み出た。傍らにはサハギンを射抜いた弓使いの女がいた。
「カタリナよ、こやつがお前さんの言っとった珍しいリッチかの?」
「はい、教授。サハギンに腕を折られて悲鳴を上げましたし、どの部族の言語か分かりませんが話しかけて来ました」
「おかしな話じゃのう、リッチには痛覚は無いはずなんだがのう・・・どれ、一つ・・・」
言うか早いかゴブリンは懐から短剣を取り出し誠二の足に突き刺した。
「うああああああ!!!」
誠二は傷を押さえようとするが手が椅子から離れない。
「落ち着け、すぐに痛みは治まる。お前さんの傷口を見てみぃ」
ゴブリンは誠二の目の前で指を数回鳴らし人差し指を傷口に向けた。今刺されたばかりの箇所に傷は有るものの血は出ていない、痛みも徐々に和らいでいる。
ゴブリンはその人差し指をゆっくりと折れた腕の部分へと進める、骨が折れて歪んでいた腕が元に戻っていることに気づかされた。
「僕の身体は・・・」
誠二がゴブリンの方を振り向いた瞬間リザードマンの曲刀が胸を貫いた。
この痛みはあまりにも現実離れしていて声すら出なかった、ただただ頭の中が真っ白になった。
曲刀が胸から引き抜かれるが血は出ない、激痛が徐々に消えて傷はゆっくりと塞がって行く。
誠二はそれを目の当たりにしてコレが夢じゃないと悟った、代わりに湧き上がる疑問は。
「僕はいったい・・・」
どもメディウサです、昔から物語を作るのは好きだったんですけど中々思いきれなかったんですよね。
これから少しづつ投稿して行こうと思っています、よろしければお付き合いください。