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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第3章 縁の国・平定編(中編)
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第96話 心を許す

「鬼たちはそんなに残っていないでしょう。仁王島は、なかなかの大きさがある無人島ですが、俺たちが倒したオーガの数と、あいつらのデカさを考えると、あるいは、もぬけの殻かもしれません」


 竜次の回答は、与一の推測とほぼ合致しており、それは恐らく、的確な計算結果と言えるだろう。竜次がはっきりと導き出した答えが考えていた以上だったので、与一は細い目を見開き、彼の知力的な素養にかなり驚いていた。


「いい答えだ。仁王島の規模からすると、その考えで合っているだろう。つまり、その時ではなく、まだ時間があると言ったのは、そういうわけだ。御館様にもここで話したように報告すれば、納得して下さるだろう。よいか?」

「よくわかりました。丁寧に教えて頂き、ありがとうございました」


 簡素な言葉で、礼節をきちんと示すのが竜次らしく、それも与一を感心させている。結の町の統治者は、竜次を智勇兼備の名将と認め、大いに気に入ったようだ。周りで一連のやり取りを見ていた、咲夜、守綱、あやめ、仙も、竜次が持つ意外な能力にびっくりしており、彼という人物を改めて見直したようだ。


「よし、この話は一旦ここで閉じておこう。それでだ、他にいい話があってな。あなた方に会わせたい人がいる。砦から外に出よう。咲夜様、皆さん。ついて来てくだされ」


 与一は黒羽織の役人を一人呼び、手早く身支度を整えると、竜次たちに同行を促し、応接室から出て行った。どういう人に会わせたいのか、詳しいことを言わないまま与一は出て行ってしまい、竜次と咲夜は思わずどうしたものかと顔を向き合わせたが、皆、ついて行くより他はない。




 与一と砦の応接室で話し込んでいたので、多少時間が()っていたようだが、外にはまだ夕方前の日が残っている。昼間の暑さ盛りが過ぎた結の町を歩いていると、民家の縁側に座り、夕涼みを始めたところの老夫婦を見かけた。結ケ原の合戦からまだ日が浅いが、この町が落ち着きを取り戻してきているのは間違いなく、それを確認できた与一の顔も、いくらか安堵の表情である。


「どこのどういう人に会わせたいかを言ってないのは、あなた方が喜ぶ顔を見たいからでね。竜次、特にお前は喜ぶと思うよ」


 先日、町案内をしていた時、与一は竜次のことを、『竜次殿』と呼んでいた。今日は応接室で話している時から、呼び捨てにしたり『お前』と呼んだりしている。これは決して礼を忘れたからではなく、与一が竜次に心を許したからであり、竜次もそのことに気づいている。気のおけない間柄として、与一が短期間で認めてくれたのが、彼にとって何よりも嬉しく、明るい顔にもそれが出ていた。

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