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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第3章 縁の国・平定編(中編)
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第95話 問答

「あの金毛のバカでかい鬼は知恵が回っていたが、やっぱりそうでしたか。それなら与一さん、鬼たちがまた残りの船でやって来るかもしれない。仁王島を制圧しないと!」


 先日の合戦における大激闘を思い出したのだろう。竜次はらしくなく少し焦った声で、与一や咲夜たち皆にそう呼びかけた。一瞬だけ間を置き、与一は細目のまま冷静に考えていたようだが、


「仁王島が鬼の島になっているのなら、武力で制圧しなければならない。しかし、今はその時ではなかろう。それに、まだ時間がある」

「? どういうことですか? 与一さん?」


 竜次は、思わず与一の方へ詰め寄り、自分に合点がいくような説明を求めた。竜次がどういう経緯でアカツキノタイラにやって来たのかは、結ケ原の合戦が終わった後、既に聞き及んでいる。そうしたことも踏まえ、縁の国を長年支えてきた与一には、異世界である日本から来た彼が、本気でこの世界と、ここで歴史を紡ぎ生きてきた人たちのため、心配してくれているのが心から感じ取られ、それが何より嬉しかった。


「竜次、お前はいいやつだな。順を追って説明しよう。この町の守備兵と御館様の兵を合わせた縁の国の軍は、先の戦いで少なくない損耗を受けている。その兵力が回復しない内に、仁王島に派兵したとしても、良い結果が得られる可能性は低い。これが一点目」

「なるほど、ではもう一つ。まだ時間がある、と仰った理由は?」


 竜次に納得がいく説明を与えつつ、与一は彼の人物と能力を測っている。


(これは飲み込みが早い。武に凄まじく長けているだけではない)


 詳しく話している間、与一は竜次の意外な賢さを酌み取り、思わず笑みがこぼれた。中堅自動車メーカーの工場で、30半ばまでのらりくらりと勤め続けていた、うだつが上がらない竜次だったが、会社において能力を十分に発揮してこなかったのは、何かしら理由があったのかもしれない。


「うむ、それも言わねばならぬな。これも先の戦いのことになるが、我らが軍は、金熊童子率いるオーガの大軍を殲滅(せんめつ)した。相当な数を屠った。さて竜次、お前には仁王島を見せておるな。鬼の島になっているとはいえ、今の仁王島に、多くの鬼たちが残っていると思うか?」


 多少持って回った謎掛けのような言い方を、与一はわざとしている。竜次の知の能力部分がどれ程か、より深く測る意図があるのだろう。竜次は、投げかけられた言葉の意味を少しの間考え、仁王島の大きさと形状を頭の中でイメージした後、しっかりとした答えを導き出した。

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