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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第3章 縁の国・平定編(中編)
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第82話 与一の人柄

 戦いは勝利に終わったが、都市防衛戦においても戦後処理がある。昌幸率いる平軍は、結の町の民から大歓声を受けながら防壁の門をくぐり、命をかけて守りきった縁の国第2の都市に入っていく。


「与一よくやってくれた。お前がいなかったら、この戦は負けていただろう。感謝に堪えぬ」

「いやいや、大した働きはしておりません。それより、御館様が早く駆けつけてくださってよかった。そうでなければ、結の町は廃墟となっていたでしょう。ありがたく存じます」


 与一は弓から離れれば、温厚篤実な人物である。昌幸は彼の武力と統率力だけでなく、人柄も大いに頼りにして気に入っていた。そうであるから、重要拠点である結の町の守備を、与一に長年任せていたのだ。そして、その集大成とも言える結果が、この結ヶ原の合戦という大戦(おおいくさ)の勝利として表れた。何も間違いではなかったのだ。


「ふふふっ、謙遜するのが与一らしい。父上、各将兵もそうですが、これだけの武功をあげてくれた与一に、褒美を与えましょう」

「そうじゃな、幸村。与一、何でも言ってみてくれ。できる限りの褒美を与えよう」


 自分たちより配下を優先して考えるのが、平一族の優れた特長である。縁の国の力が、年を経るにしたがって少しずつ弱まりつつあるとしても、統治者である平一族の人徳と魅力により、国力がまだ保たれ続けているのは間違いない。与一に対する昌幸と幸村の感謝も、本心からのものであり、それを見ている他の配下も、偽りない態度を示す最高責任者に、心奥からの忠誠を誓う気になれるわけだ。


「そうですな、それでは望むものを言いましょう。この戦で命を落とした兵、大傷を負い、体が不自由になった兵がいます。心に大きな傷を負った兵もいるでしょう。その兵たちと家族へ、充分な補償をして頂ければと存じます」

「それは私の責務じゃ。何があっても補償を行う。確実に約束しよう。与一、もう一度聞くが、お前自身が欲しいものはないのか?」

「ありません。御館様の今の約束で満足いたしました。大変ありがたく存じます」


 部下を深く思いやり、あまりに私欲がない与一に、


(相変わらずじゃな)


 と、苦笑しつつ昌幸は幸村と顔を見合わせていた。




 昌幸は与一に、5000カンの金を褒美として与え、追って家老に昇格させる旨を伝えた。与一の役職階級は現在中老である。どうしても褒美を受けてもらわねば困ると、半ば昌幸が押し切った形だ。優秀でありながら私欲がなさすぎる配下を持つのも、困りものといったところだろう。

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