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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第3章 縁の国・平定編(中編)
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第81話 激戦の末に

 鈍い衝撃と共に大岩のような鬼首が地に落ちた後、丘の如き金熊童子の巨体は力を完全に失い、轟音(ごうおん)を辺りに響かせながら、結ヶ原に倒れていく。目を大きく見開き竜次を凝視するその首からは、もはや激しい怒りも恨みも感じられない。それどころか、このような強者がこの世界にいたのかという驚きと感心が、泣く子も黙る大鬼の顔から窺える。


(…………)


 まだ油断なくドウジギリを手に下げ、こちらを見ている竜次に、金熊童子は何かを言いかけた。だが、ふと気を変え口をつぐむと、完全に生命力を失い黄泉に旅立つまでの間、鬼神の強さで我を(ほふ)った竜次を目に焼き付けるように凝視し、そして事切れた。


「金熊童子、強えやつだったぜ。ん? 妖力が消えたな? 空気が変わったぞ?」


 オーガ軍の大将である金熊童子の命が失われ、同胞のオーガたちの統制に使われていた大量の妖力も、同時に全て消えた。その影響を受け、軍を構成していたオーガたちの動きは、まとまりなくバラバラになっている。オーガ一体一体が強いといえども、先刻までとは格段に与し易く、戦況は平軍の大優勢へと一気に傾く!


「こうなればもう少しだ!! 皆の者!! もうひと踏ん張りだ!! 力を貸してくれ!!」

『応!!』


 副大将幸村の鼓舞を兼ねた号令を受け、平正規軍は勢いづき、猛将と精兵たちは一気呵成に戦力が大幅に下がったオーガ軍を攻め上げた! 平正規軍は各所で奮闘し、オーガたちを全て斬り倒した! 平軍の勝利だ!




 国家存亡を賭けた、結ヶ原の合戦に勝利した後、屍となったオーガたちは、全てが鬼の肌色に応じた宝珠に変化した。その中でも、ひときわ大きな金色の宝珠の前に立ち、総大将昌幸は、腕を組み何やら沈思している。


「父上。あちらで将と兵たちが待っております。声をかけてあげて下さい」

「む、すまん。そうであったな。すぐ参る」


 昌幸は、金毛のオーガ、金熊童子という名に幾ばくかの心当たりがあるようだが、その心当たりが記憶のどこから来ているものか思い出せず、静かに一人考え込んでいたらしい。歩み寄って来た咲夜に呼ばれ、ハッと我に返った昌幸は、総大将として、この戦における最後の務めを果たすため、激戦を生き残った精悍な顔で待つ、頼もしき将兵たちの前へ歩み出た。


「皆の者! 縁の国の命運を賭けた戦でよく働いてくれた! 我らが軍の勝ちじゃ! 勝鬨(かちどき)を上げよ!」


 昌幸の傍で片膝を突き控えていた、副大将幸村が立ち上がり、


「エイエイオー!!!」

『エイエイオー!!!』


 よく響く最高の大声で、結の町守備兵を含む戦で命を張った全軍と、勝鬨(かちどき)を三度上げた! どの将兵も、縁の国を守りきった、命を振り絞った後の素晴らしい笑顔を見せている。

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― 新着の感想 ―
[一言] 首を刎ねられてからも暫くは意識を保っていたあたり、金熊童子の生命力の強さが伺えますね。 思い直して口をつぐむ前に、彼は果たして何を言い残そうとしていたのでしょうか。 金熊童子が当初言い残そう…
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