第80話 鬼の首級
自部隊の精兵たちに、守護結界を張っている咲夜を厚く守らせ、幸村は宝刀マサムネで周囲のオーガを牽制しつつ、竜次の傍へ走り寄った。
「まだ動けるな? 竜次?」
「ええ、ここからですよ。あのバカでかい金熊童子をなんとか斬りたい。どうしますか?」
打撲の痛みを堪えてはいるが、竜次はまだ両手でドウジギリを振れる。それを素早く確認した幸村は、すぐさま金熊童子に切っ先を向け、
「私と守綱、あやめ、3人で連携して金熊童子の注意を引きつける。竜次はその時の隙を逃さず、とどめを刺せ。よいか?」
「承知しました!」
まず竜次に、令を示した。平正規軍は精兵で構成されていると言えども、今対峙している金毛の大将鬼が大金棒を振るえば、何人でかかろうが命を散らすだけだろう。大きな賭けになるが、強力な武器を扱える将たちが協力し、金熊童子を撃破するしか方法がない。
「守綱! あやめ! ゆくぞ!」
『承知!!』
距離を置き、こちらの様子を窺っていた金熊童子にわずかな緩みを見出した幸村は、機を逃さず2人の将に令を発した! 数本の苦無を取り出したあやめは、数え切れないくらい鍛錬してきた正確な投擲で、金毛の大鬼の機動力を、少しでも奪おうと試みる!
「そんなものが役に立つか!! 痛うも痒うもないわ!!」
あやめの遠距離攻撃を避けもせず、分厚い筋肉で覆われた脚にそのまま受け、鼻で笑った金熊童子は、
「今度こそ皆殺しにしてくれる!!」
猛烈な力で地を蹴り、再度ぶちかましを竜次たちに喰らわせ、全てを粉砕しようとしてきた! しかし、どうしたわけか脚に力が入らない。
「これは! しびれ薬か!」
「もう遅い!! その首もらった!!」
幸村と守綱、長年お互いを信頼してきた主従が見事なコンビネーションで、動きが止まった金熊童子の右胴と左脚に斬りかかる! 大金棒で守り、斬撃を防ごうとするが、脚の自由が奪われている金毛の大将鬼は、守綱の胴切りをかろうじて弾き飛ばしただけで、
「グウッ……!! 小癪な!!」
幸村のマサムネによる縦斬りを深くその脚へ受けている! 左脚が利かなくなるほどのダメージを負った金熊童子は片膝を突き、その巨体を支えるしかなくなった。千載一遇、機を逃さず大鬼のバカでかい体を、竜次は階段のように駆け上がる!
「覚悟しやがれ!! この大化け物!!」
「なにっ!!!」
大鬼が眼を見開き睨めつけた左肩には、宝刀ドウジギリを巨岩かというほどの、金熊童子の太い首に食い込ませた竜次が鬼神の表情で立っており、渾身の力で、大将の鬼首を見事に刎ね飛ばした!