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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第3章 縁の国・平定編(中編)
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第75話 震天弓

「与一様が矢を放つぞ!!! 左右に散れー!!!」


 超速子を利用した拡声器を用い、肺活量と大声に自信がある兵たちが、結ヶ原で必死に戦う同士達に、退避を呼びかけた。与一が震天弓につがえた矢は、まばゆい光の法力を帯び、今にも放たれんとしている!


(!!!)


 与一の弓に狙いをつけられた、オーガの大きな一団に応戦している守備兵達にも、大声の知らせが行き届き、ほとんど瞬間的にその場から素早く離れた。それを確認した与一は狙いを寸分も違えることなく、莫大なエネルギーを溜めた光の矢を、閃光と共に放つ! 空間を切り裂き高速で進むその一撃は爆発を伴い、オーガの一団を見事吹き飛ばし、粉砕した!


「うまくいったか……」


 安堵の笑顔を総司令官与一は浮かべているが、発する声が細く力ない。一撃必殺以上の破壊力を持つ、震天弓の矢を放ったことで、体力の大方を消耗してしまったのだ。通常の所作や歩行をするのに支障はないが、今日もう一矢、同じ矢を撃つことは到底無理であろう。しかしながら、凄まじい光の矢の威力は、戦況を確実に好転させている。


「ウガァー!?」


 広い結ヶ原で膂力を振るい、好き放題に暴れていたオーガ達は、一様に(ひる)み、統制を失って後退していた。ただ、今日ここにいたオーガの軍勢は、()()()()100程度だ。


(敵の本隊がまだ見えていない。明日からが厳しくなるぞ)


 何があろうが結の町を死守する。大きく疲労した体を、少しでも早く回復させるため、深い呼吸で整えながら、与一は細い目を鋭く光らせ、そう考えていた。




 オーガは強いと言えども、その力を一日中、無尽蔵に振るえるわけではない。夜になれば眠りもする。ただ、夜、盛んに動くタイプの鬼もいるが、幸いその手の鬼は、結の町を攻める大軍勢において、少ないようだ。朝から夕方まで激しい戦いを何とか凌いだ与一と守備兵達は、今夜、警戒を怠らないながらも、休息を取れている。


 問題は夜が明けてからだ。


「昨日より大分多いな、ご苦労なことだ」


 防壁の上から呆れるような表情で、今日も結ヶ原に展開しているオーガの軍勢の様子を窺い、与一は町を守る方法を手繰っていた。見える限りの鬼を数えると、300はこちらに寄せて来ようとしている。昨日、与一の弓矢で失った統制は、ほぼ回復しているようだ。


(間違いなく指揮を執るオーガがいる。だが、まだ本隊が見えぬ)


 結の町の守備兵は1500。絶望的な状況に見えるが、光明はまだ薄く差し込んでいる。冷静な細い目で、今朝の状況を分析し、与一は同士達へ的確に下知した。

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