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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第2章 縁の国・平定編(前編)
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第67話 仙狐の礼

「あんたたちのおかげで、男の供養がすっかり済んだよ。私がここにこだわって居る必要もなくなった。それでなんだけどね、あんたたちについていってもいいかい?」

「なんと!? それは、我らの仲間になってくれるということでござるか?」


 守綱のみならず、竜次たち一行は、仙からの突然の提案にみんな仰天している。一行の旅についていくということは、九尾の狐が仲間になるということだろう。とてつもない霊力を持つ仙が加わるとしたら、縁の国の戦力が、一気に上ることになる。一騎当千どころではなかろう。それだけに、皆、仙の頼みが素直には信じられない。そんな一行の様子を見回して、妖艶な細腰の女は苦笑し、


「ふふっ、なんだい? 騙すようなことはしないよ。本当にあんたたちの仲間になるのさ。昔の男の義理立てで、妖狐山の里を守りながらここに住んでいたけど、あんたたちが区切りをつけてくれた。力になろうじゃないか? ついていっていいかい?」

「すまない。願ってもないことだったから、慌てちまった。俺は大歓迎だが、俺たちの主人は咲夜姫だ。どうでしょう咲夜姫? 九尾の狐が力を貸してくれるんですよ?」

「…………」


 竜次に呼びかけられても、咲夜は彼女らしくなくしばらく判断に迷い、沈黙していた。国のことを考えるなら、(まさ)しく願ってもない申し出である。二つ返事で受けたいのは山々だ。しかしながらもどかしいことに、


(仙さんは美人すぎる……しかも、竜次さんを気に入っている。好きになっている)


 同じ男を好いている女としての嫉妬が、咲夜の判断を迷わせ、鈍らせているようだ。地球における現代社会の話を少し入れることになるが、能力が申し分ないのに、容姿が良すぎて企業に採用されないという、妙な話が稀にある。言ってみれば、咲夜はその採用側の責任者に今なっているわけで、彼女自身、私情が混ざって判断ができづらくなるとは、全く思ってもみなかった。それだけに、嫉妬が優先しそうになる、自分の私心が歯がゆい。


「わかりました。仙さん、これからよろしくおねがいします。私たちと縁の国に力を貸して下さい」

「ありがとうね、咲夜ちゃん。私に色々思いがあっただろうけど、よく許してくれたよ。私があんたと国を守ってあげよう。ついでにそこのいい男も守ってやろうかね」


 仙から妖艶な色目を向けられ、竜次は年甲斐もなくドキッとしてしまった。それを厳しい目で、咲夜は咎めつつ、


「竜次さんは私の大切な……配下です。勝手なことは控えて下さい」


 彼を想う私情を極力抑え、やや強い口調で、仲間になった仙に筋を通した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 竜次さんへの恋愛感情に起因する焦りと嫉妬心を自覚しつつも、個人的な感情を抑えて仙さんを仲間に迎え入れる。 そうした咲夜さんの冷静な判断力と己の私情を律する克己心の強さには、好感が持てますね…
[一言] せっかく高い霊力の持ち主なので、見せ場ができるのは歓迎ですね♪
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