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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第2章 縁の国・平定編(前編)
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第46話 飽きない雑炊

「賊はうまく倒せたかね?」


 竜次たちは、晴明の庵に無事帰ってきている。賊討伐が達成できたのは、百も承知で聞いているのだが、この陰陽師は一応ながらも、まだ竜次たち一行を試しているのだろう。だとすると、それに沿った証拠を見せなければならない。


「はい。賊の他に、イエローオーガも退治しました。ここに2つ、黄色の鬼が変化した宝珠があります。賊の亡骸は、村に頼んで荼毘(だび)に付しています」


 咲夜が無限の朱袋から、そっと差し出した黄色の宝珠を見て、晴明はうなずき、納得したようだ。そして多少ではあるが、顎に軽く手を当て、驚いた表情で何やら考えている。


「居るのは賊だけと思っていたが、イエローオーガとつながっていたのか。いったいどうやってそうなったのか、私にも測りかねるな。ともかくあなた達は、賊討伐を成し遂げてくれた。これで日陰の村は、平穏で静かになるだろう。約束通り、国鎮めの銀杯の在り処を占おう」


 晴明は一風変わった価値観を持ってはいるが、約束を違える人ではない。占ってくれる確約をようやく得た、咲夜、守綱、あやめは、それぞれ一様に安心して顔を緩めている。それで、竜次はというと……


「…………」


 ドウジギリを存分に振るった戦いで、余程腹が空いていたのか、日陰菜の雑炊をおかわりし、まだ黙々とかき込んでいた。咲夜を始め、彼の旺盛な食欲を呆れたように見ている中で、晴明は、竜次のマイペースさが余程おかしかったのか、吹き出して笑っている。


「ぷっ! はっはっはっ! 日陰菜の味噌雑炊は、2日続けて食うても飽きまい。鍋が空になってもよい、しっかり食べなさい」


 晴明は、竜次という異世界人を、本当に気に入ったと見える。彼に向けるその涼やかな目は、とても優しい。




 竜次たちの腹ごしらえがしっかり終わったあと、どこからか占いに使う大きな赤水晶が乗せられた、腰ほどの高さの台座と、姿見の鏡を、晴明は縁側がある8畳間に運んできた。竜次たちは、忙しそうにそれらを丁寧に配置する晴明の様子を見て、何かしら手伝おうとしたのだが、


「いや、あなた方にこれは手伝えぬ。風水に従っておるのだ。私にしか、どこにどれを置けばいいか分からぬ」


 と、手で制される。陰陽師の彼しか知らない自然真理に依る法則があるのだろう。ならば、大人しく座って待つより他はない。


 晴明が準備を進めている最中、竜次は姿見の鏡の意匠に感心し、見続けていた。鏡自体、一点の曇りも無く美しいのだが、それがはめ込まれている樫の木枠に素晴らしい彫物細工が施されている。よく見ると、一定の規則性が細工にあり、それも緻密な風水に関係しているのだろう。

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