第42話 起死回生
多いといった賊の数だが、こちらの機先を制した攻撃は完全に成功し、すでに3人を斬り伏せている。敵の残りは4人、晴明の話によると、刃で人を殺めたことがある賊らしいが、一人ひとりの強さは、たかが知れている。だが、斬った賊共の中に首領格はおらず、今、怯みながらも抜き身を放ち、蛮刀を向けて対峙している濃いヒゲの男がそうであるようだ。その首領と見られる男を中心に、拙いながらも陣形を組み、賊なりの覚悟で、竜次たちに応戦しようとしている。
「お前たちは、外道な類の賊らしいな。殺しをして盗みもしているんじゃあ救いようがねえ。一人残らずたたっ斬ってやる!」
「へ、へへっ! それがおめえらにできるかな!?」
首領は恐れながらも不敵な笑みを浮かべると、素早く懐から呼笛を取り出し強く吹いた! 大きく高い笛の音が、静かな森林と泉がある山麓一帯に響き渡る! すると、森の中で寝ていたのか、黄色い巨体のオーガがのそりのそりと2体現れ、賊共の前に立ち、守るように加勢した。
(イエローオーガに、人が敵味方かを識別する知性はないはず……呼笛に操られてるということ?)
コギツネマルを正眼に構え、油断なく敵を窺いながらも、あやめは今起こっていることを冷静に分析している。年若い美少女ながら、場数を踏んだ忍びである彼女の刀は、鬼であろうが人であろうが、敵を斬るのに躊躇しない。しかし、ハッと思い出したことがあり、咄嗟に、
「イエローオーガは毒を吐きます! 離れて!」
と、戦いの最前線に出ている竜次と守綱に早口で呼びかけた! あやめ自身もイエローオーガは初見の相手であるが、毒にやられた人々の話が頭をよぎったのだ! だがそれも一瞬遅く、黄色の鬼は大口を開け、毒霧を前線の2人に向け、勢いよく吐き出した!
「うぐっ!? これはいかん?!」
「なんだ!? 呼吸がキツイ?!」
戦況は一気に悪化した。イエローオーガに近づきすぎていた竜次と守綱は、毒霧を吸い込んでしまい、まともに動けない! 万事休す、少なくとも竜次は朦朧としながらそう考えた。しかし、それを救う起死回生の一手を咲夜が放つ!
「堅陣!!」
地に祈り、神々しいオーラを帯びた銀髪姫が法力を開放すると、地脈を通して、竜次、守綱、あやめ、咲夜を、薄水色の守護結界がそれぞれ覆った! それは毒霧を寄せ付けず、イエローオーガの岩を砕く打撃すら緩和できる。近づくことができるようになった、毒を受けた竜次と守綱に、あやめは素早く駆け寄り、毒消しを手際よく飲ませた。
「ありがとう、あやめさん。ヤバかったぜ~! そこの黄色い鬼ども!! お前らから先にぶった斬ってやる!!」
特効薬である毒消しは、すぐ体の隅々まで回り、状態が回復した竜次は大きな啖呵を発したかと思った刹那、イエローオーガの太い首をドウジギリの刃で、いとも簡単に刎ね飛ばした!