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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第2章 縁の国・平定編(前編)
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第35話 成仏の祈り

 竜次たち3人の手練の太刀筋は、どれも目に留まらぬほど速く、正確に餓鬼の急所を斬り飛ばした! 機先を完全に制された餓鬼たちは、断末魔の叫びを上げることもなく、それぞれの亡骸を野辺にさらしている。あまりにも急襲だったので、苦しみを感じる暇がなかったのだろう。それは、竜次、守綱、あやめの慈悲だったのかもしれない。


「グガ!?」


 残った餓鬼の群れは2匹、もはや群れと言える数ではない。あっという間に同族の3匹を斬られ、残りは完全に狼狽しており、もはや反撃するどころではなくなっていた。


「憐れとも思うが、お前たちは鬼だ。斬るぞ」


 守綱は、容赦なくコテツを餓鬼に振り下ろす! その後には、まるで薪を割ったような亡骸が、鈍い音を立てて地に落ちた。その間に、竜次は最後の1匹の首を刎ね、既に刀を納めている。


 いっとき経つと、餓鬼たちの亡骸は全て小さな宝珠に変化した。


「今度生まれ変わるときには、鬼にならないでくださいね」


 咲夜は、念仏を唱えながら餓鬼たちの成仏を祈り、無限の朱袋に5つの小さな宝珠を丁寧に収める。




 餓鬼の群れを撃退したあとの旅路は、他の鬼や怪異に襲われることもなく順調に進んでいる。また時折、談笑しながら馬を走らせているのだが、


「あやめさん。あんたの刀は、何ていう名前なんだい? えらく素速い太刀筋だったが」


 と、先程のあやめの戦いぶりが気になったらしく、竜次が彼女の得物について尋ねた。あやめは、忍びらしくさして表情も変えず淡々と答え始める。


「コギツネマルと言います。竜次さんのドウジギリ、守綱さんのコテツより小振りで、一撃の強さはやや劣りますが、扱いやすく連撃に長けた刀です。私の手によく馴染んでいます」

「なるほどなあ、そうみたいだな。さっきの刀の速さは見事だったよ。俺とドウジギリくらい相性がいいのかもしれねえな」


 竜次にそう褒められても、あやめの表情はほとんど変わらないが、嬉しくないこともなく満更でもなさそうだ。そうした刀談義に入ろうと、守綱もポンポンと愛刀コテツの柄を軽く叩き、


「相性で言えば、わしとコテツも相当なものじゃぞ、竜次。浄土山の戦いにしても、お主はよく見ておるじゃろう?」


 と、なかなか得意げに話しかけてきた。実はそのことで、竜次は前から1つ気になっていたのだ。


「それなんですよ、守綱さん。日本に来た時に、コテツを身につけてなかったのはなぜなんです? その刀があれば、レッドオーガも何とかなったでしょうに」

「む……そのことか。はっきり言ってしまえば、拙者の失態だったわけじゃが」


 守綱にとって竜次の疑問は、多少耳に痛かったが。過去の失敗を吹っ切ろうと思ったのか、よく経緯をまとめて語り始めた。

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