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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第7章 宵の国・平定編

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第291話 役小角(幻体)・その1

 竜次たち5人は冬山用の足(ごしら)えをしっかり整え、雪が積もった妖狐山の麓を、朝から一定のペースで歩き進んでいる。なだらかな低山とはいえ、新雪に覆われた山道は歩きにくく、目的地である山の北側麓まで竜次たちが移動するのに、想定よりも幾らか時間がかかった。


「おっ! あれだな! 大きくて雰囲気がある球だなあ。想像してた以上だ」


 妖狐山の麓をぐるっと回り込み、目的地の広い窪地へ到着した竜次たち一行は、あからさまな存在感を漂わせ大地に鎮座する黒曜石の大球を見て、それぞれが感嘆の声を上げている。見たまま思ったことを、竜次が正直に言っている通り、無造作にどっしりと構える黒曜石の大球は、暁の国の古代遺跡にあった物より何倍も大きく、押しても引いてもびくともしなさそうだ。


「うむ、確かにこれなら十分だろう。それでは、()()()()を呼び出すぞ。皆、心づもりはよいな?」


 漆黒の大球上部に積もった雪を払い、黒曜石が十分な霊力量を内包していることを調べ終えた晴明は、竜次、咲夜、あやめ、仙、4人がいる方に顔を向け、それぞれに覚悟を求めた。もとよりそのためにここへ来たのだから皆の覚悟は決まっており、晴明の確かめに対し、4人はしっかりとうなずき返す。


 皆との、心の一致を確認できた晴明は、長い真言を唱え、月光の腕輪を着けている右手をかざし、青く輝く法力の光を、黒曜石の大球に向けて撃ち放った! 漆黒の大球が持つ霊力と晴明が解き放った法力が共鳴し、辺りが一瞬まぶしい光で満たされる! 目も開けられないほどのまぶしさが収まった後、鎮座する黒曜石の大球の前に、白ひげを蓄えた一人の好々爺が、幻体の姿で現れた。晴明の師、役小角である。


「近頃よく会うようになったのう。今度はどうした?」


 晴明は、相変わらず飄々とした様子で、辺りの雪景色を見回している我が師に、最敬礼の態度をとった後、この妖狐山に呼び出した用件を話した。


「なるほどの。お前たちの力を更に引き出し、大江山の酒呑童子を倒せるようにして欲しい、それが望みか」

「はい、その通りでございます。度々で(まこと)に申し訳ありませぬが、今、私どもが頼れるのは御師様だけです。どうか我らが願いをお聞き届け下さい」


 ここまでの経緯を聞き、望むところを理解した役小角は、懇願する晴明と目を合わせ、少しの間考えていたが、


「まあよかろう。仲間を想うようになった今のお前は、なかなか良い目をしておる。わしが直接稽古をつけ、お前たちを鍛え直してやろう」


 陰陽師として好ましい方向に変わった愛弟子の心を見定めると、快く、その願いを受け入れた。晴明の誠意が無事伝わったことで、竜次は安堵の表情を浮かべていたが、


「小角のじいさん、ありがとうよ。それはそうと、前鬼と後鬼がいないみてえだが、あいつらどうしてるんだ?」


 役小角の両脇を見て気になったのか、以前戦った式神たちの所在を、あっけらかんと尋ねている。


 物怖じしない竜次の態度を、白ひげの好々爺は気に入ったようだ。役小角は一頻(ひとしき)り笑い、


「あやつらは、わしの庵で昼飯の支度をしておる。意外に器用な式神たちでな。なかなかうまい具合に飯を炊くんじゃ。それはそうと……」


 そうユーモラスな調子で答えると、後ろに転がっている黒曜石の大球に軽く手をかけた。


 一見すると意図が見えない行動だが、どうやら役小角は、自身を一種の計測器として、黒曜石の塊にどれだけの霊力量が含まれているか、先ほど弟子の晴明が調べたときより、正確な精度で測っているようだ。白ひげの好々爺は、手のひらを滑らかな球体表面に当てたまま、表情をシリアスなものに変えると目をつむり、しばらく集中していたが、


「うむ、これならよかろう。この黒曜石球の霊力を用いれば、幻体の姿で、お前たちの相手をするくらいのことはできる」


 納得がいく測定結果が得られたらしく、大球からその手をゆっくりと離した。

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