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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第6章 暁の国・平定編(後編)

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第274話 クラフトオーガ

 竜次たち一行が、呼びかけられた方向を振り返ると、そこには強い眼光を持ちながらも、泰然と落ち着き払った老翁が、杖をついてにこやかに立っていた。


「長老! ご無事でしたか!」

「ハッハッハッ! 私は若い頃から危ない目に遭ってきましたが、どうやら生き運が強いようでしてな。そう簡単にはくたばりはしません。それはそうと……」


 再会の挨拶もそこそこに、エディンバラ町衆を束ねる長老は、レンガと木材を組み合わせて造られた、ある建物の玄関前まで歩いて行くと、


「皆さんこちらへ来てください。お目に入れておきたいことがあります」


 手招きしながら竜次たち一行を呼び寄せた。




 頑丈な造りの建物内は、竜次たち全員が入っても空間に余裕があるほど広かったが、陽の光を取り入れる窓は少なめに付けられている。まるで何かを隠しているような建物の造りに、竜次たち一行は皆、(いぶか)しんだが、工房として使われている奥の部屋に入ると、目に飛び込んできた信じ難い光景により、その疑問は一瞬で解かれた。


 雑多に工具が散らばった工作机の前には、なんと人間の子供ほどの体格をした2匹の小鬼がおり、奥部屋に入ってきた竜次たちを見て怯えているではないか! しかも、工作机のすぐ横の木箱には、竜次たちがどうしても手に入れたかった鬼の呼笛が、十数本も入っている!


「えっ!? どういうこと!? 長老! この小鬼たちと鬼の呼笛は!?」

「私たちは、この小鬼たちをクラフトオーガと呼んでおります。非力ながらオーガには珍しく、知恵と器用さを持ち合わせている工作に長けた(しゅ)でしてな。人の言葉も話せます。この隠し工房で虎熊童子に命じられ、オーガの呼笛を作り続けていたようです」


 これは、まさに瓢箪から駒だ。長老の話を聞き、目の前の状況が飲み込めた咲夜は、怯えるクラフトオーガの前まで進むと膝をかがめ、


「鬼の呼笛を作れるのは、あなたたちだけなの? 他に作っている仲間はいない?」


 過度に小鬼たちを追い詰めないよう、柔らかめの表情で問いかけた。殺されると思っていた2匹のクラフトオーガは、咲夜の優しい顔を見て、緊張による(こわ)ばりが幾らか解けたらしく、問いかけに対し正直に答え始める。


「工作ができる仲間は他にもいるが、鬼の呼笛の作り方を知ってるのは俺たちだけだ。他のところでは作れねえよ。ついでに言えば、鬼の呼笛の作り方を知ったのはそんなに昔じゃねえ。確か……1、2年くらい前のことだ」


 咲夜の優しさが通じたのか、尋ねた以上のことをクラフトオーガは答えた。この回答には、今までの事実との整合性がある。


 竜次がアカツキノタイラの世界に来て間もない頃、浄土山で賊たちが鬼の呼笛を吹き、オーガと結託して、戦いの中で幸村を追い込んだ。浄土山の戦いは今から(さかのぼ)ると、何ヶ月か前に起こったことであり、縁の国の将が鬼の呼笛を見たのは、その時が最初だったからだ。

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