第270話 エディンバラ攻城戦・その4
多くの精兵たちと共に、咲夜たち縁の国5人の将は、エディンバラ城内中央に広がる中庭まで、行く手を邪魔する各種のオーガを次々と倒しながら突き進んだ!
所々に木々が植えられ、正方形の広がりを持つ城の中庭は、軍の編成などを行うことも想定して造られているのだろう。現在、数百人の兵士がこの中庭まで進入してきているが、それでもまだスペースに十分余裕があるため、オーガたちとの乱戦が始まっても戦いやすいはずだ。
精兵数百名と縁の国5人の将に続き、アーサー王と将軍ランスロットも、聖剣エクスカリバーと剛剣アロンダイトで邪魔な鬼たちを斬り飛ばし、中庭まで突入してきた! 暁の国縁の国連合軍の最高戦力がここに結集したわけだが、将たちの動きはここでピタリと止まった。中庭のスペースを挟んで王の間がある方向に、グレーの肌をした大鬼が威圧的な眼光で立っており、怒りの権化のごとき表情を将たちに向けている!
「熊童子を殺し、俺もここまで追い込んできたか。どうやらお前らの力を見くびりすぎていたようだが、この短期間で何があった? アーサー王とランスロットの力だけでは、こうはいかんはずだ」
激しい忌々しさと怒りを表に出し、グレーの大鬼はこちらをギョロリと睨み据えてきた! だが、その凝視を平然と受け流し、前へ一歩進み出た仙が、
「縁の国から来た私たちが手助けしてるのさ。私たちが殺ったのは熊童子だけじゃないよ。金熊童子と星熊童子も殺した。四天王で残ってるのはあんただけだよ。虎熊童子」
おびただしい霊力を漂わせながら、言葉で虎熊童子を圧した。
「星熊童子までもか! それにその霊力……! お前は九尾の狐だな! なぜ人間に手を貸す!」
「星熊童子も同じこと言ってたけどねえ……まあいいや。どの道お前はここで死ぬんだ。理由を聞く必要なんかないだろ?」
仙から眼中にないといった形であしらわれた虎熊童子は、歯噛みをして悔しがったが、邪悪でおぞましい鬼の笑いを浮かべると、腰に結わえた巾着袋から鬼の呼笛を取り出し、図体に似合わぬ器用さで奏でた。すると……!
「出てきやがったか!」
中庭の壁に付けられた大扉からホワイトオーガが続々と現れ、総大将の虎熊童子を守るため、強固な壁となって立ちはだかる!
「フッフッフッ! こやつらを砕いてここまでは来れまい。死ぬのはお前たちの方だ!」
鉄壁の陣形を敷いた虎熊童子は、怒りの啖呵を切ると同時に炎の妖術を唱え、身構える連合軍へ業炎の柱を飛ばしてきた!
「…………」
高速で飛ぶ業炎の威力は凄まじい! だが、仙の後ろに控え、様子を冷静な目で見ていた晴明は、慌てることなく法術で水の霊壁を瞬時に作り出し、向かってくる高熱の火柱を一つ残らず相殺した!




