第261話 前鬼(幻体)/後鬼(幻体)・その2
玄武陣の法術で、自分たちの守りを固めた竜次、咲夜、あやめは、稽古相手の前鬼と後鬼に戦いの構えを向け、そのまま様子を窺い続けている。
(造作もない自然体でどっちもいるが、隙がねえ!)
不敵な笑みを浮かべ、前鬼と後鬼も竜次たち3人の様子を見ているのだが、彼ら2体は特別な構えを取っているわけではない。そうでありながら、戦闘モードに体と気を切り替えた前鬼と後鬼には、攻めかかる隙が無く、竜次、咲夜、あやめは、式神の鬼ではなく、強固な2枚の鉄壁に対峙しているような錯覚すら感じている。
「よお、かかってこんのか? なら、こっちから行くぞ!」
臆している竜次たちを、前鬼と後鬼は少しあざ笑うと、次の瞬間、2体の鬼の身は飛燕を超えるスピードで、前衛にいる竜次とあやめに突進して来た! 想定外の衝撃的なスピードに面食らった2人は、何とか防御の型を取り、前鬼と後鬼が拳から繰り出してくる攻撃に備える!
『発!!』
2匹の式神が放つパンチは、並のオーガとは比較にならないほどの速さと威力を持っていたが、それに加え、気の力による爆発を伴っている! 竜次とあやめはドウジギリ・改とコギツネマル・改で異常な衝撃力を受け流し、自分たちの身にかかるダメージを最小限に抑えた! しかしながら、
「うわっ!!」
「くっ!!」
式神の拳から発せられた気の力による爆発を受け、後方に体を弾き飛ばされ体勢を大きく崩している! かろうじて受け身を取り起き上がった竜次とあやめを見て、前鬼と後鬼は余裕の笑みを浮かべた。
「何とか防いだようだが、驚いたか? 俺たちは発勁の力を拳に込め、相手を粉砕することができる。気を抜くと、お前らの体は粉々になるぞ」
「前鬼の言った通りさ。こっちが少し手の内を見せたんだから、もっと気合入れなよ。君たちの力はこんなもんじゃないだろ?」
俺たちをガッカリさせんな、とでも前鬼と後鬼は言いたげだ。実戦稽古は命がけで、対峙する式神の力は異常だが、やられてばかりではこちらも収まりがつかない。体をしっかり起こし、体勢を再び整えた竜次とあやめは、目で示し合わせると、
「シッ!!」
「ハッ!!」
前鬼と後鬼のお株を奪うスピードで突撃し、ドウジギリ・改とコギツネマル・改、斬れ味鋭い2本の幅広の刃を、2体の首目掛け、高速で振り下ろす!
『そうこないとな!!』
竜次とあやめが放った渾身の斬撃を、前鬼と後鬼は、両腕に装備している金属製の手甲で受け止めた!
凄まじい斬撃を受け止めた式神たちの顔に、余裕の笑みは既にない。




