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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第6章 暁の国・平定編(後編)

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第259話 稽古の条件

「わしらが何者かは、これで大方分かったじゃろうが……。晴明、わしを呼び出したのは、何用があってのことかの?」


 飄々とした調子で、役小角は晴明に用件を聞いてきた。陰陽道の師からの問いかけに対し、晴明は莫大な耐久力を持つホワイトオーガに手こずったこと、アーサー王を助け首都エディンバラを奪還し、暁の国を平定しようとしていること、それらの問題と目的の解決と成就(じょうじゅ)のため、我々の力を引き出して欲しいことなど、今までの経緯を絡め、自らが召喚した役小角へ用件を説明した。


「ふ~む。話は分かったが、しばらく会わんうちに、お前は人柄が変わったのかの? 人の世に関心を持つような男ではなかったはずじゃが、まあそれもよかろう。力が必要なんじゃろ? 稽古をつけてやろう」

「本当かい? ありがとう、恩に着るよ」


 役小角が竜次たち一行に、力を引き出す稽古をつけることを、快く承諾してくれたのが嬉しかったのか、九尾の狐の仙が、珍しいことに前へ進み出て白ひげの好々爺へ軽く頭を下げ、礼を()っている。頭に狐耳がある細腰の麗人の礼を受けた役小角は、また少し珍しいものを見たような目で、しばらく仙を眺めていたが、


「なんじゃ、九尾の狐までおるのか。晴明、お前は本当に昔とは、人が変わったんじゃの。稽古をつけてやるとは言ったが、晴明と、今、目の前にいるお前さん……九尾の女狐は別じゃ。ここではお前さんたちの力を、引き出すことはできん」


 仙が漂わせている強い霊力を見定めると、これから行う稽古の条件を話し始めた。




 役小角が先に言っていたが、古代遺跡での稽古に参加できるのは、竜次、咲夜、あやめの3人ということになる。


 召喚された役小角、前鬼、後鬼は、幻体としてこの遺跡に現れており、100%の力を発揮できる本体の姿ではないのだという。それでも、古代遺跡にある黒曜石の玉の力が足りず、幻体のままでも計り知れない霊力を持つ役小角は、この場で力を十分発揮することができない。そのため、前鬼、後鬼の2匹だけが、竜次たち3人の稽古の相手をすると、白ひげの(おきな)は、一通りまとめて説明した。




「分かったよ。私と晴明は、竜次たちの稽古を見守ってりゃいいんだね」

「そういうことじゃ。元々強いお前さんたちが一緒に戦ったのでは、全く稽古にならん。あの3人は、竜次、咲夜、あやめと言ったか、どこかに腰掛けてあやつらにつける稽古を、お前さんたちは静かに見といてくれ」


 役小角に、そう促された晴明と仙は、座るのにちょうどよい平らな岩を見つけると、そこに腰掛け、稽古準備のため、ウォーミングアップを始めている竜次、咲夜、あやめの様子を見守り始めた。


 3人の稽古相手としてぶつかる前鬼と後鬼は、幻体といえども尋常ではない強さを持っている。眼光鋭く楽しそうにこちらを見てくる前鬼と後鬼を、


(気で負けちゃいけねえ!)


 竜次は強い眼差しで(にら)み返した。

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