第25話 万夫不当
ドウジギリの柄に仕込んだ装着ボタンを、竜次はブルーオーガの群れに向かって駆けながら押した。すると、ドウジギリと竜次の体が七色に光ったかと思った刹那、乙種甲冑装備がピッタリと装着されている。
(やはりこれはいい。これなら存分に戦えるぞ!)
体によく馴染む防具の感触を確かめ、竜次は精兵を率い、浄土山へ駆ける速度を上げていく。
「竜次に遅れを取るな! わしに続け!!」
斬り込み隊長となった竜次の突撃に意気を得た守綱も、第一の愛刀であるコテツを抜き、甲種甲冑装備に包まれた身で、残りの精兵100名を率いて駆け走っていた。
「うむ! 頼もしい限りだ! 私も続こう! 動ける者は、私に続け! 手傷を負った者は咲夜から治療を受けよ! 咲夜、後方支援を頼む」
「かしこまりました! お気をつけて、兄上」
待ち焦がれていた援軍が到来し、幸村とその軍勢の士気は最高である。縁の国の次代を担うその目は爛々と輝き、もはや負ける気はしなかった。前方を走る、竜虎のような猛将2人に続き、幸村も陣に残っていた全軍と共に前へ駆けていく!
前線で、筋骨隆々としたブルーオーガと対峙してきた幸村の軍勢は、総じて疲弊し、消耗と絶望感に苛まれていたが、突如として後方から現れ、神速の一撃を青鬼たちに加えた、2人の猛将が率いる援軍から力を得て、その士気を盛り返した!
「もう大丈夫だ! 俺たちが青鬼を斬る!」
頼もしい啖呵を切った竜次は、次の瞬間、既にブルーオーガの1体の首を刎ね飛ばし、返す刀で傍にいるもう1体に狙いをつけ、反撃の体勢を取らせないまま、逆胴切りに青鬼の巨体を真っ二つにしている! その間、守綱も愛刀コテツを使い、精兵たちと連携しながらブルーオーガの1体を無事倒していたが、
(何という強さだ! ドウジギリの力に依るところが大きいのだろうが、それにしても竜次は凄まじい!)
剛と柔が渾然一体となった、鬼神の如き強さを示す竜次の剣に、守綱は武者震いを覚えた。
「青鬼どもは完全に怯んでおる! 皆の者! もう少しだ! 一気に決着をつけるぞ!!」
「応!!!」
万夫不当の援軍に加え、総大将幸村の激で、軍の士気は最高まで上がりきった! 幸村も自ら宝刀マサムネを抜き、戦意を失いかけているブルーオーガへ斬りかかって行く! 形勢は完全に逆転し、戦の決着は、その後1時間ほどでついた。縁の国、平幸村軍の勝利だ!
「危ないところでしたな、若」
「ふふふ。バツが悪いが、その通りだな。それにしても……」
戦の後処理を指揮しつつ、幸村は守綱と話す中、ある疑問が浮かんでいた。
「なぜ賊どもが、これだけのブルーオーガと通じていたのか?」
誰も答えられない謎である。傍らで聞いている咲夜と竜次も、首をかしげるばかりであった。