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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第6章 暁の国・平定編(後編)

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245/321

第245話 菩薩心

 一定の悟りを開いた僧侶のように、竜次は、オーガへの憎しみを持ち続けつつも、その先へ歩み出すことができ始めている今のあやめの心境を、正確に言い当てた。あやめは、ここまで抱えてきた複雑な辛さが残る言い難い境遇を、竜次に打ち明けたわけだが、返ってきた真正直な言葉を聞いて、


(全て包み隠さず話してよかった)


 驚くと共に、心の奥底からそう思えている。


「心の何かが変わった……竜次さん、そうおっしゃいましたね?」

「そうだな、確かにそう言ったよ」


 竜次の言葉により、今まで目の前に掛かっていた薄闇が打ち払われ、あやめは心の視界が開けたようだ。ポニーテールがよく似合う、この慎ましい美少女は、竜次に再びそう聞き返し、(まこと)の心情から出た言葉かどうかを確かめると、視線を6人の(わらべ)たちが遊ぶ縁側の庭へ移している。


「私の心を変えてくれた……そうだとするならば、それはあの子たちのおかげだと思います。あの子たちは、私の幼い頃と同じく身寄りのない孤児でした。この忍者屋敷で私が引き取るまでは」


 優しい眼差しで、楽しそうにゴムボールを投げ合っている童たちを見ながら、あやめは、込み入った事情を続けて竜次に話し始めた。


 縁の国の忍者武将として武功を重ねてきた中で、ある日あやめは、昌幸と幸村から何か褒美を与えて報いたいと言われた。あやめはその時に、幼い頃の自分と同じ身寄りのない子たちを屋敷に引き取って保護し、自分の里親である忍者夫婦と共に、育てていきたいと申し出たのだという。


 昌幸と幸村、それに桔梗と咲夜は、あやめの志に感動し、申し出を快く受け入れた。平一族は縁の国の国庫金を使い、忍者屋敷を改築して十分広げた後、里親として子どもたちを養う金を、それ以来あやめへ、定期的に送ってくれているのだという。


「2500カンものお金を、幸村様は竜次さんを通して送って下さいましたが、このお心遣いも、あの子たちの養育費に充てられます」

「そうだったのか……そうした事情を抱えてたんだな。幸村様が俺に、あやめさんのことを知っておいて欲しいと言ってた意味が、よく分かったぜ。全部腑に落ちた」


 あやめが、抱える事情を自分に全て打ち明けてくれて、竜次は心底よかったと思っている。すっきりした爽やかな笑顔を、信頼する仲間であるあやめに向けると、


「オーガに対するあやめさんの容赦ない厳しさと、普段のところどころで見せてくれてる優しさ、話を一通り聞いて、俺にはどっちもよく理解できたよ。あやめさんは、そんなに若いのに大したもんだよ」


 と、(てら)いの無い正直な言葉で、彼女に寄り添った。あやめは竜次の誠実さを受け、菩薩のような優しい微笑みを浮かべている。

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