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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第6章 暁の国・平定編(後編)

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241/321

第241話 生活感

 竜次の素性を知り、幼いながらもその人柄を見て、完全に信用できると判断した男の子は、少しばかり心の内に残っていた不信感が取り除かれたらしく、


「こっちから家に入れるよ。ついて来て」


 と、積極的に竜次の先に立って手招きし、忍者屋敷の玄関まで案内してくれた。周りで竜次と利発そうな男の子とのやり取りを見ていた他の(わらべ)たちも、この背が高く引き締まった体格のおじさんは悪い人じゃない、と認識したようだ。一時、遊ぶのを止めて竜次をしばらく観察していた5人の童たちは、彼から優しい雰囲気を感じ取ったのだろう、みんな安心して再び広い庭を駆け回り始めている。


 男の子の案内を受け、忍者屋敷に入った竜次は、外観に違わない母屋内部の広い造りに、思わず感嘆の声を上げた。土間が玄関から左右に広がっており、その空間の右隅に、炊事を行う超速子調理器や流しなどが置かれた台所が(しつら)えてある。


 上がり(かまち)(玄関から家の床に上がるときの段差)は、小さな子でも家に入りやすいように、それほどの高さはつけられておらず、そこから靴を脱いで上がった場所は、木目を残しつつ黒く塗られた板敷きの床が広がるダイニングになっていた。その奥ゆかしいダイニングには囲炉裏も造られている。土間の台所で作った料理はここまで運ばれ、そのまますぐ囲炉裏端で食べられるのだろう。


「これは思ってた以上に素晴らしい家だが、屋敷の見物に来たわけじゃねえからな。感心ばっかしてる場合じゃねえ。あやめさん! 竜次です!」


 無骨ながら高い機能美が備えられている忍者屋敷の広い造りに、感心しきりの竜次であったが、ここに来た本題を思い出したらしく、奥に続く部屋にいるであろうあやめに届く大きな声で呼びかけ、自分の来訪を知らせた。すると、


「お上がりください! そこから真っ直ぐ奥に進んで左手の部屋にいます!」


 あやめが、高くよく通る綺麗な声で応えてくれた。あやめの所在を確認でき、奥に上がる許可も貰えた竜次は少しホッとした表情を浮かべ、忍者屋敷のやや長い廊下を歩いて行く。




 あやめがいる部屋は、縁側が庭に面している10畳敷きの落ち着いた和室である。ふすまを開けて竜次はその部屋へ入ったわけだが、彼は一緒に旅をしている時と違う、あやめの可憐な町娘風の格好を見て、


(こいつは可愛らしい! いつものボーイッシュなあやめさんとは雰囲気が違う!)


 小さくだが、思わず感嘆の唸り声を上げてしまった。ポニーテールの後ろ髪にしているのはいつもと同じなのだが、着ている着物が桜色でとても良い。この色柄の着物は、咲夜が好んでよく着ている。配下という立場ではあるものの、咲夜と歳が近く仲が良いあやめは、銀髪の姫から良質な反物か着物を譲ってもらえたのかもしれない。


 慎ましい笑顔であやめは座布団に座り、部屋へ入ってきた竜次の方を見ている。竜次が目を移すと、あやめが座るすぐ傍には裁縫道具が置かれており、さっきまで彼女は繕い物の最中だったのだろう。


 いつもと違う生活感を見せてくれたあやめに笑顔を返し、竜次は敷かれていた座布団にゆっくりと腰を下ろした。

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