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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第6章 暁の国・平定編(後編)

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240/321

第240話 遊ぶ童(わらべ)

 異世界アカツキノタイラでの生活が長くなってきたとはいえ、竜次は国鎮めの銀杯探しの長旅に出ていることが多く、拠点である縁の国連理の都の地理をまだまだ知らない。あやめが住む忍者屋敷へ行くのにも、幸村から簡単な地図を描いてもらい、あちらこちらの建物や畑をキョロキョロと見回して、地図と照らし合わせながら歩き進んでいる。


「おっ! あれがそうだろうな。大宮殿ほどではないけど、広い屋敷だなあ! あやめさんは立派な家に住んでいる」


 幸村は自室で竜次と談笑中に、忍者屋敷への地図をサラッと描いて渡したのだが、その時、


「ふふっ、心配せずともすぐ見つかる。そういう建物だ」


 と、都の土地勘がまだ若干足りない竜次に、笑いかけながら屋敷の特徴を少し教えていた。その若殿の言葉通り、実をよくつけた柿の木が数本立っている屋敷の庭は、ちょっとした運動場かと思えるほどの目立つ大きさで、東西南北、四方がその庭に面している二階建て忍者屋敷の外観は、無骨な造りながら奥行きと幅がとても広く、例え大人が10人上がって過ごそうとも、ストレス無く滞在できるスペースがありそうだ。


 竜次が今驚いているように、忍者屋敷は見たままとにかく広い。


「広いのは分かったんだが、子どもたちが、ええっと……6人いるな。どういうことなんだろう? 庭が広いから近所の子を遊ばせてるんだろうか?」


 庭を子どもたちの遊び場として開放し、自由に使わせているとしたら、6人もの(わらべ)が楽しそうに駆け回っているのも、妙なことではない。ただ、竜次は、思い思いに遊んでいる童たちとあやめとの関係性が、幾らか想像しにくいようで、板葺(いたぶ)きの忍者屋敷周りではしゃぐ着物姿の子どもたち、というノスタルジックな絵画的光景を眺めつつ、しばらくその場で静かに考えていた。


 分からないものは考えても分からない。立ち止まっていても時間がすぎるだけなのに気づいた竜次は、忍者屋敷の敷地に入ると、こっちを見てキョトンとしている童の一人に、


「こんにちは、ちょっとごめんよ。この家にあやめさんはいるかい?」


 と、軽い挨拶を交えながら聞いてみた。話しかけられた童は、それほど竜次を不審に思った様子はないようだが、


「あやめお姉ちゃんなら家にいるよ。おじさん誰?」


 子供らしい正直なつっけんどんさで、答えると同時に聞き返してきた。自分がおじさんと呼ばれる歳であることを十分認識している竜次は、当然怒ることもなく、笑いながらこう返している。


「俺は源竜次って言うんだ。あやめさんの仕事仲間だよ。仕事仲間って分かるかい?」

「ああ! おじさんが竜次さんなんだね! あやめお姉ちゃんが帰ってきたとき、竜次さんっていう強い人とお仕事をしてるって言ってたよ!」


 相手を子供と思わず、きちんと名乗って良かったようだ。あやめはどうやら童たちに、竜次のことを話していたらしく、話しかけてきた少し妙なおじさんの素性が分かった途端、聞き返した男の子の顔が明るくなった。竜次が名乗った後の返答を聞くと、この男の子はなかなか利発で、しっかりした子のようだ。

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