第24話 浄土山の戦い・その2
「やったか!?」
ブルーオーガの1体は、損害を被ることなく黄泉送りにできた。だが、陣幕に近づいてきている青鬼はそれだけではない。
「ウガアァァァアアア!!!」
鬼には連帯意識というものがないのだろうか。同族のブルーオーガが倒されたというのに、それをほとんど意に介さず、もう1体の青鬼が幸村の側近たちに近づき、山も震えるかというほどの雄叫びを上げ、凄まじい膂力で殴りつけてきた! 鍛え抜かれたさしもの精兵も虚を突かれ、攻撃を受けきれなかった者もいる。殴打の衝撃により、吹き飛ばされる者すらいた。
「くっ!? ならばもう一度だ!」
右側面から来たブルーオーガに宝刀マサムネを構え直した幸村は、怯むことなく迅速な踏み込みで斬りかかった! 防御を全く考えない、捨て身の斬撃だったが、
「風刃!!」
それより速く無数の風の刃が、ブルーオーガの巨体を切り刻む! 何事が起こったか? 脅威が消えたのを確認した後、振り返った幸村の眼の中には、一番会いたかった最愛の妹の姿がある。
「兄上! 遅くなりました!」
「幸村様、遅れましたが、咲夜様をお連れしました」
薄緑色の美しい陣羽織を着た咲夜と、忍装束を身にまとった、涼やかな目の美少女に、微笑みながら幸村は嬉しそうにうなずいた。
「あやめ、よく案内してくれた。咲夜、よく来てくれた」
「間一髪でしたね。危ないところでした。まさか、このようなことになっているとは……」
「はっはっはっ! まあそういうな。私の不備が目立ってしまう。ところで守綱も来てくれたようだが、そちらの御仁は?」
幸村は尋ねてはいるが、訝っているわけではない。竜次のいでたちを見れば、心強い援軍の一人であることはすぐ分かる。このような苦戦の状況だが、頼もしい彼の人となりを少しでも知っておきたいのだ。
「俺は源竜次と言います。手短に言うと、日本という違う世界からやって来ました。守綱さんの部下となり、咲夜姫をお守りする主命を昌幸様から仰せつかっています。ここへは助太刀に参りました」
竜次の口上と、素晴らしい面魂を改めてじっと見た後、幸村は笑顔でもう一度うなずいた。
「源竜次、よく来てくれた! そなたはドウジギリを腰に帯びているようだが……もしや、使えるのか?」
「はい、手足のように使うことができます。ご覧に入れて頂きましょう」
戦場での自己紹介は十分。竜次は守綱に目配せすると、精兵を100名率い、浄土山で苦戦している幸村の軍勢を救うため、駆け走って行った!
(オヒラ善吉様 作画)