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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第6章 暁の国・平定編(後編)

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233/321

第233話 政治理念

 天運に恵まれ、結果として大勝で終わったとはいえ、合戦で働いたシャーウッド軍の兵たちの中には、負傷している者が多くいる。アーサー王とランスロットは凱旋を終え、シャーウッドの砦兼役所まで仕事に取り掛かるため移動すると、まず、負傷兵が十分な手当てを受けられるよう指示を出すため、軍病院にいる軍医と衛生兵を呼び寄せた。アーサー王は軍医長を中心に、医療物資が必要量あるかなど報告を聞き状況を確認すると共に、負傷兵たちの治療をできるだけ優先するよう、医療班に依頼している。


 生きている負傷兵を治療する手配を済ませた後は、合戦で犠牲となった精兵たちに報いなければいけない。アーサー王と将軍ランスロットは教会から司祭を呼び寄せ、簡素ながらソールズベリーで命を散らした英霊たちを弔う合同葬を執り行った。


 国の指導者は、国民の幸福な生活を最優先しなければならない。それがアーサー王とランスロットが持つ政治的理念であり、合戦で命を落とした兵たちの家族や親族へ、合同葬において哀悼の誠を捧げると共に、十分な生活がこれから送れるよう、手厚い補償を行うことを遺族となった者たちへ確約した。このことを掘り下げて考えると、縁の国の頭領、平昌幸と、暁の国の国王、アーサーは、国民に対してよく似た政治理念を持った仁君であると言える。


(国王としての適性は申し分ない。忠誠を誓っているランスロット将軍も強い。だが……)


 竜次は、テキパキと戦後処理を行うアーサー王の姿に舌を巻いていたが、これだけの指導者が、なぜ暁の国の首都エディンバラを占領されることになったのか考えていた。砦の執務室でその経緯については、アーサー王から直接説明を受けている。そうではあるのだが、なぜ? という疑問が、アーサー王の優秀さを見ると頭に浮かばざるを得ないのだ。


(虎熊童子と熊童子は不意に現れたと言っていたな。そいつらたちからエディンバラを守る当時の準備が、相当ひどく不足していたんだろう。それに、アーサー王とランスロット将軍は強いんだが、俺たちの戦力と比べると、どうしても見劣りする)


 国王と将軍に対して「自分たちの方が強い」という考えを持つと、失礼にあたるかもしれない。竜次は一瞬だけそう考えたが、咲夜を始めとし、竜次を含む縁の国の将たち5人は、暁の国に平穏をもたらすまで、その力をアーサー王に貸さなければならない。正確な戦力分析は必要であり、アーサー王を中心とする暁の国の長所と短所を知ることは、エディンバラ奪還に向けて決して無駄にはならないはずだ。


 段取り良くアーサー王とランスロットは戦後処理を進めていき、大雑把な部分での片は、合戦後の2日間で全てついた。これでようやく、生きている元気な者たちが一息つく番である。


 ソールズベリーの合戦における勝利を祝い、シャーウッドの砦でささやかな宴が今日催される。

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