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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第6章 暁の国・平定編(後編)

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231/321

第231話 間違いなく

 石柱群により形造られている古代遺跡は、太古の昔に古代人たちが力を合わせ、建造したはずである。だが、国鎮めの銀杯が置かれている小さな石柱の窪みは、ちょうど銀杯を収めるためのサイズになっており、人が工具を使いその大きさに掘った形跡がある。


 考古学的に推測すると、古代遺跡が完成した後の時代の人々が、国鎮めの銀杯をここまで運び、どのようなことがあっても後の世まで守れるように、石柱の一部を加工して銀杯を保管したのだろう。しかしながら、古代遺跡と繋がる黒鏡面の手鏡が、熊童子という凶悪な知性を持つ鬼の手にどこからか渡り、後の世の子孫たちが銀杯の在り処とアクセスできなくなることまでは、想定していなかったと思われる。


「間違いなく石化した国鎮めの銀杯ですね。熊童子が黒鏡面の手鏡と銀杯の繋がりを、どこのどの時点で知ったのかは謎ですが、鬼と銀杯が相反する力を持つことが幸いしました。在り処は分かっていても、銀杯に近づけなかったのでしょう」


 咲夜はそう推理をまとめた後、石柱の窪みに収められている石化した国鎮めの銀杯に近づき、この神秘的な場を造り出した古代人の霊に向けて敬意を払い、一礼すると、無限の朱袋から錦の袱紗(ふくさ)を取り出した。袱紗の中にはきらびやかな時送りの砂が入っている。咲夜は白い指で一つそれを(つま)むと、力を失った石杯に満遍なく振りかけた。


 時送りの砂が持つ霊的な力で石杯は遥かな時を遡る! 咲夜の指から時送りの砂がパラパラと落とされた後、一瞬、小さな虹がかかり、石杯は国鎮めの銀杯に変化した! 無事、力を取り戻したのだ!


「良かった。これで4つ目ですね、咲夜姫」

「ええ、竜次さんや皆さんのご協力で4つ目まで集まりました。残るはあと3つです」


 年若いながら縁の国の姫として皆の先頭に立ち、努力を続ける咲夜のことを、アカツキノタイラの神々は見守っているのかもしれない。大役の責任を順調に果たせた銀髪姫は、安堵の表情で4つ目の国鎮めの銀杯を手に取ると、無限の朱袋へ丁寧に間違いのないよう収めた。


 この古代遺跡での目的は無事に果たした。竜次、咲夜、晴明は、黒鏡面の手鏡で作り出した光の門から帰るため、その方向へ歩き始めている。この時、晴明が何となく後ろを振り返り、石柱群の方をぼんやりと眺めていなかったら、彼ら彼女らの運命は、また変わったものになっていたかもしれない。


(おや? あれは?)


 晴明が目に留めたのは、石柱の上に鎮座する黒曜石の玉である。それは遠目ながら、大人の頭2つ分ほどの大きさがあるように見える。竜次とあやめが以前、日陰山の自然洞窟から持ち帰った黒曜石の玉よりも大きい。竜次が調査を担当していた遺跡中央部に、その黒曜石の玉が乗った石柱はあるようだが、彼は近づきすぎて調べていたため見落としたのだろう。


(私が気づいてよかったのかもしれぬ。心に留めておこう)


 晴明はそう考えると、いつもの涼やかな顔で前を向き直し、黒の狩衣を秋風に揺らしながら、前を行く竜次と咲夜を追って行った。

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