第213話 多少の邪魔
秋晴れのどこまでも青い空に、お日様が天高く昇っている。大地に恵みを与える優しい秋の日差しが降り注ぐ中、竜次、あやめ、晴明の3人は、軍馬と天神足で涼風を切るように、シャーウッドから東に伸びる街道を進んでいた。
先日、ランスロットと協力して、シャーウッドの北にあるオーガ発生地域で赤竜鬼などの討伐を行った。その事と合わせて、整備された街道を進んでいるのもあり、低草が所々に茂っているソールズベリー平原に行き着くまで、竜次たち3人はオーガや怪異に遭遇しなかった。順調な道中と言える。
「ん? ハッキリ目立っているが、あれだな。なるほど、地図に描いてある通りだ」
「そのようですね。鉱脈に日が当たって、白い照り返しがここからでも眩しい。場所は間違いなさそうだが……」
暁の国のソールズベリーは、地球で言えばステップ気候の大平原に似た大地が続いている。今、竜次たち3人がいる平原の西部には、ポツンと小さいながら森林があり、そこからほど近くに、白い輝きが目立つ暁白鉱石の鉱脈が、東に伸びる形で広がっていた。
そうした涼しい秋風が戦ぐソールズベリー平原で、晴明と竜次が一時立ち止まり、少しの間、何かを考えている。後から馬でついて来たあやめも、馬上から遠目を利かせて、低草の生い茂りと剥き出しの大地が混じり合った平原を見渡していたのだが、あるものが目に留まったようだ。
「赤竜鬼がいますね。数えると6匹います。倒さないと鉱脈で採掘ができそうにありません」
「あやめさんの言う通りだな。やっつけるしかない」
赤竜鬼6匹は、まだいずれもこちらに気づいていない。竜次とあやめは落ち着いたもので、まず西側の小さな森林に気配を殺して向かい、軍馬を手頃な木に繋いだ。軍馬を撫でて落ち着かせると、ドウジギリとコギツネマルを鞘からそれぞれ抜き、甲種甲冑装備を身に着けた後、先に進んでいる晴明と目で示し合わせ、
「オオオォォォオオッッ!!」
「ハアアアァァァッッ!!」
戦闘態勢が整うや否や、赤竜鬼の群れに電光石火の速さで向かっていった! 完全に虚を突かれた赤竜鬼6匹の内、3匹は、晴明がものも言わずに、一瞬で法力を集中して放った3つの巨大な風の刃で、真っ二つに体を割かれ、何が起こったのかも分からぬまま、ドサリと鈍い音を立て、野辺に死骸を落とした。
残り3匹の赤竜鬼も、竜次とあやめの強さにかかれば、倒すのに造作ない。硬く太い竜の首を、竜次はいとも簡単にドウジギリで刎ね飛ばし、あっという間に2匹の赤竜鬼を斬り倒している。残り1匹の赤竜鬼の首も、あやめが躊躇なく斬り落とし、既に名刀コギツネマルは何事もなかったかのように、鞘へ収められていた。




