第206話 小さな宴
援軍として赴いた竜次たち一行と、ランスロット率いる治安維持部隊の帰還を、アーサー王は甚く喜び、シャーウッドの大門前まで自ら出向き、彼ら彼女らが上げた戦果を労った。
数日間の戦いを終えた部隊の中には、かすり傷程度を受けた者を除いた負傷兵が2割以上居り、アーサー王は、まず戦いで傷を負った兵たちの治療を最優先し、救護班の衛生兵と軍医たちに指示を出した。王の指示を受けた者たちは皆、仕事モードにスイッチを切り替え、深手を負い苦しんでいた兵たちに応急処置をテキパキと行い、シャーウッド内の軍病院へ入院させるため、負傷兵を回収していった。
「我が君、ありがとうございます。深い傷を負った者はいますが、何とか、部隊に1人の犠牲者も出すことなく帰還できました。援軍として来て下さった、縁の国の咲夜様と4人の武官の方々のおかげです」
「うむ、よく帰ってきたランスロット。実のところ、何日経っても帰って来ぬから心配しておったぞ。お前にしては珍しく手こずったな」
全幅の信頼を置くランスロットに、アーサー王は多少冗談めかして言っているのだが、王の片腕として長年働いてきたブロンドヘアの将軍は、バツが悪そうに頭をかいて苦笑するばかりである。
「面目ない。討伐地域に着いた時は、せいぜい1日で片付くと思っていたのですが、オーガたちが次々と湧いて出て来てしまい、このように日数がかかってしまいました。咲夜様たちの援軍がなければ、危なかったかも知れません」
「いやいや、勘違いするなランスロット。お前を責めているわけではない。討伐を成し遂げ、無事に帰ってきたのだ。これ以上のことはない」
アーサー王は、将軍ランスロットの肩をポンと軽く叩くと、かけがえのない配下の無事を心から喜ぶ笑顔で、少し落ち込みかけている将軍の顔を見た。共に過ごし共に働き、ランスロットがいつも見てきたのであろう王の笑顔は、彼を元気づけるのに十分であったようだ。ランスロットの沈みかけた表情が、良い笑顔に変わっている。
シャーウッドの少し北、多数のオーガが発生出現する地域での討伐が成功し、一定程度の安全が確保されたシャーウッド周辺は、小康状態となった。暁の国の首都エディンバラが占領されている状況ではあるが、要塞都市シャーウッドの機能が、オーガ討伐成功により幅広く増加することになり、エディンバラ奪還に向けての準備が大きく一歩進んだ。
暁の国第2の都市シャーウッドに来て早々、咲夜、竜次、あやめ、仙、晴明の5人は、アーサー王と将軍ランスロットを助け、彼ら2人から強い信頼を得ることができたのだ。
シャーウッド大門前での事は、一通り落ち着いた。
竜次たち5人は、オーガ討伐部隊が解散された後、宿に戻り身支度を行い、戦いにおける大活躍の労いと、5人の暁の国来訪を歓待する意味を込め催される、小さな宴の席に今、座っている。




