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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第5章 暁の国・平定編(前編)
204/321

第204話 陰と陽

 ランスロットが自在に振るう異様な大きさの大剣にかかれば、赤竜鬼を斬り倒すことなど造作もなかったが、いかんせん敵の数が多く、ランスロットが率いている治安維持部隊の中には、戦闘能力が低下した負傷兵も出ていた。


 赤竜鬼を始めとするオーガの群れは、深手を負い弱った兵を見逃さず執拗に攻撃してくる。負傷しながらも、命を投げ出し戦う覚悟の兵たちを、アーサー王の片腕である将軍が見捨てるはずもなく、負傷兵たちをかばいつつ、ほとんどランスロット一人で、息を切らせながら戦い続けているのが今の状況だ。


「こんなに湧いて出てくるのか!? アロンダイトを振るい続ければいずれは終わるが、それにしてもきりがない!」


 ランスロットは宝剣アロンダイトを振れるギリギリのスタミナを保ちながら、最小限の動きで赤竜鬼2匹を胴斬りに仕留めた! だが一息つく間もなく、不気味な無表情のオーガたちが新手として現れ、疲労が濃いランスロットに緩慢な動きでノソノソと向かってくる!


「来るなら来い! 湧いたら湧いた分、斬り倒すまでだ!」


 宝剣アロンダイトを正眼に構え、ランスロットは気力を高めてオーガたちの襲撃に備えていたが、不確定要素は突如として出現する。静かな覚悟を決めたランスロットの後方から、空間を切り裂く高速で、無数の炎柱が飛来し、構えたアロンダイトを彼が振るうより前に、向かってくるオーガたちを全て焼き尽くしてしまった!


「なんだと!? いったい何が起こった!?」


 オーガたちを葬り去った無数の炎柱は、晴明が法力を高めることもなく、右手を振りかざしただけで発生させたもので、恐ろしいほどの法術をいとも簡単に使った晴明は、何事も無かったかのように涼しい目をしている。事態を把握しようと後ろを振り返ったランスロットは、全てを見通す陰陽師の双眼を見て、


(これは……人の子の目ではない)


 窮地を救ってくれながらも、圧倒的過ぎる晴明の力に、空恐ろしさを覚えている。その表情にも言葉にも表し難い心情を察したのか、竜次が軍馬から降り、やや呆然としているランスロットに近づくと、


「あなたがランスロット将軍でしょう。アーサー王から頼まれ、援軍に来ました。俺は縁の国の武官、源竜次と言います。俺たちと一緒に、湧いてくる残りのオーガたちを蹴散らしましょう!」


 竜次の長所である屈託のない笑顔で、救援に来たことを伝えた。


「源竜次殿……ありがたい! オーガたちを共に一掃し、シャーウッドに戻りましょう!」


 爽やかで裏表がない竜次の笑顔により、幻想的な強さを見せつけた晴明の目から解き放たれたランスロットは、我と意気を取り戻すと、宝剣アロンダイトに導かれるまま、残るオーガの群れに突貫した!

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