表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第5章 暁の国・平定編(前編)
189/321

第189話 茶屋の名物

 日陰の村では早朝から秋雨が降り続いていたが、今、竜次たち一行がいる八日市の宿場町では、薄い雨雲が広がっているものの、雨が小止みになってきている。曇天の空を見上げると、薄い雨雲が東から西に風で流れて行き、遥か東方の空を眺めると、明るい陽光が薄っすらと現れ始めていた。人の往来が盛んなこの宿場町の空も、もう少し時が経てば晴れてくるだろう。


「人の行き交いは賑やかですが、やはり父上が言っていた通り、暁の国方向から来る旅人は少ないようですね」

「そうみたいだね。何だろう……ここからもう少し東に行けば暁の国に入るんだろうけど、国鎮めの儀式で晴らした瘴気が、東の方からは漂ってくるね。嫌な感じだよ」


 仙は大霊獣の鋭敏な感覚で、暁の国を覆っている瘴気を既に嗅ぎ取っていた。仙と話していた咲夜も、その、空気に異物が混じったような違和感に十分気づいており、竜次、あやめ、晴明を見回してゆっくりうなずき、一行の中で感覚の共有を図っている。以心伝心かテレパシーのようにも思えるかもしれないが、竜次、あやめ、晴明も、咲夜と同じことを考えていたからか、東から漂う『嫌な感覚』は3人にも伝わったようだ。




 いずれにしろ竜次たち一行は旅を進め、瘴気漂う暁の国に入らなければならない。しかしながら、八日市の栄えた街道と、その両脇に立ち並ぶ多くの店に、皆、興味を惹かれてもいる。


「東に進んで暁の国に入るには、まだ情報が十分足りませんね。ちょうどあちらに茶屋があります。茶屋で休息を取っている旅人に、話を聞いてみましょう」


 茶屋の串団子が食べたくなったわけではないだろうが、あやめが指で示し、そう提案した。あやめが指し示した方向を見ると、暁の国から歩いて来たと思われる旅人が一人、茶屋に座って店主に注文をし、ホッとした様子で一息ついている。暁の国から来る旅人は少なく、これは、話しかけて情報を集める貴重な機会である。


 この宿場町に昔から建っているのであろう、黒く塗られた古めかしい大黒柱が特徴的な茶屋に、竜次たち一行は入店すると、


「おじさん! みたらし団子を5本頼むよ!」


 竜次が奥にいる店主によく通る声で、この茶屋名物のみたらし団子を早速注文した。やや恰幅(かっぷく)のいい中年の店主は、


「あいよ! ちょっと待ってな!」


 そう言ったかと思うと、年季の入った慣れた手つきで5本の大きな団子を炭で(あぶ)り、秘伝の甘いタレを満遍なくつけ、竜次たち一行のところまで、程良く熱いほうじ茶と一緒に持ってきた。


 店の名物だけあって見栄えも良く、美味そうな団子だ。しかし今は、団子より情報が先決である。先に大きなみたらし団子を楽しんでいる、暁の国から来た旅人の隣に竜次は座ると、何気なく自然な距離感で会釈をし、赤髪の旅人と話し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ