表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第5章 暁の国・平定編(前編)
187/321

第187話 約束の盃

 行ったり来たりで忙しい日である。しかしながら瞬間移動とは便利なもので、竜次たちは朱色の大宮殿で主命達成の報告を済ませた後、仙が唱えた縮地の法術により、すぐに日陰の村に帰って来れている。再び田畑を通る田舎道を使い、晴明の庵に一行は歩いて戻ったのだが、昼下がりにはなっているものの、庵の中には、まだ秋の陽光が明るく差し込んでいる。


「晴明の気まぐれのお陰で、あれこれ順調にことが進んだね。さて、まだお日様が残ってるけど、今日はどうしようかね?」

「予定が順調に進んだのなら、時間が出来たということだろう。全く焦る必要はない。せっかくここに来たのだから一晩、私の庵で休んで、明日から旅を始めればよい。しばらく庵を離れるしな。冷やし箱に入っている食材を空にしておかなければならん。今晩は皆でご馳走を作って食べよう」


 意外に生活感がある陰陽師晴明の言葉に、仙は妙なものを見る目で驚いていた。


(竜次と会って、人の感覚が戻ってきたのかもしれないね)


 少しの間、仙は切れ長の目で晴明と竜次を交互に見ていたが、自分の中で何やら合点がいったのか、可憐な微笑みを浮かべている。微笑みながら2人の男を眺めた後、仙は晴明の提案に黙って従い、台所の冷やし箱から肉、魚、野菜などの食材を取り出し、包丁を持って調理に取り掛かった。それを皮切りに皆もテキパキと動き出し、今晩のご馳走作りが始まった。




 白壁の庵に置いてある冷やし箱の容量は大きく、入っていた食材を使い切るのは、なかなか大変であった。晴明の話によると、日陰の村自体が大田舎なので、特産品である日陰菜の取引があるとはいえ、行商人が来る回数が少なく、食材をまとめて買うようになるから、保存もこうなるのだそうだ。兎にも角にも調理が全て済み、居間の囲炉裏端中心に豪華な料理が並べられ、これからの旅の壮行会も兼ねた今晩の宴が開かれた。


「晴明さん、約束を果たせましたよ。またこうやって、酒を酌み交わせました。これからはいつでも一緒に呑めますよ」

「はっはっはっ! そうだな、いつでもだな。よく無事に戻ってきてくれた、竜次殿」


 宴には酒もたっぷりと用意され、竜次と晴明は、約束の盃を酌み交わしている。どちらも見ていて気持ちのいい呑みっぷりであり、馬が合う彼らが返盃で見せる男の友情は、咲夜、あやめ、仙から見て、


(ああいう感覚はないな。分かり合えるのって、羨ましいわ)


 楽しく美しいものであったが、女の視点からは、若干分からない部分があるのにも、そう気づき、盃を交わすだけで自然と心が通じる竜次と晴明の関係に、咲夜と仙は特に、軽い嫉妬のようなものを覚えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ