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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第5章 暁の国・平定編(前編)
182/321

第182話 トンチンカン

 村を照らす日は早朝より高くなってきているが、時刻で言えば、今は午前10時頃だ。竜次や咲夜たちの小腹が丁度空いてきたおやつ時であり、口に入れた薄皮饅頭のこしあんの甘さが、竜次たち一行の一噛みごとに、それぞれの体中へじんわりと行き渡る。


 晴明も竜次たちと一緒に茶菓を楽しんでおり、端正ながら柔和さを含ませた表情で茶をゆっくりとすすっている。その落ち着いた様子を目で辿っていた咲夜は、いつになく笑顔を絶やさない陰陽師が、陶器の湯呑を置き、一服ついたのを見計らって、自分たちがこの庵に来た用件を切り出した。


「晴明さん、私たちがここに来る度におもてなしを頂き、ありがたく思っています。来る度に申し訳ないのですが、今回もお頼みしたい用件を持ってきました。私たちは強大な首領格の鬼の内、金熊童子、星熊童子の2匹を倒しました。ですが、残りの強大な鬼たちは4匹残っており、集めなければならない国鎮めの銀杯も4つ残っています」

「うむ、引き算をするとそういうことになるな」


 それだけ聞けば、咲夜が何を頼みたいのか十分気づいている晴明なのだが、柔和な表情の中に(たた)えていた笑顔だけを少し控え、相槌を入れて銀髪姫が次に続ける言葉を待っていた。


「はい、6から2を引いて残り4匹、7から3を引いて残り4つです。私たちはアカツキノタイラの平和を取り戻さなければなりません。ことを成し遂げるために、今、情報が必要です。晴明さん、首領格の鬼たちの居場所と銀杯の在り処を、占って頂けませんか?」


 晴明は、咲夜の美しく決意に満ちた声による頼みを聞き終わると、静かに湯呑のほうじ茶をすすり、一時の間を作った。その空気を整える間はすぐに終わり、陰陽師は全てを見通すかのような目を咲夜へ向け、こう答える。


「縁の国はあなた方が平和にした。この国に強大な鬼はもういない」

『???』


 晴明の答えは、縁の国の安全が確保されたという確証を得る上で重要な情報ではあるが、今聞きたいことはそれではない。何かの意図を持って、この陰陽師はトンチンカンとも思える回答をしたのかもしれない。しかしながら、端正な表情を変えない晴明の方へ、一斉に目を向けた竜次たち一行の中に、その意図が分かる者は居るはずもなく、どう反応してよいか分からず、皆、しばし呆然としている。


「晴明、そういうことを聞いてるんじゃないんだよ! 他の強い鬼がどこにいるか聞きたいんだ!」


 晴明と付き合いが古い九尾の狐の仙は、晴明が言った見当違いの回答に苛立(いらだ)ったのか、少し怒った顔で陰陽師に詰め寄った。仙の怒り顔は、鬼百合のような迫力に満ちた美しさがあり、さしもの晴明すらもたじろぐほどだ。


「まあ、待て待て! そう怒るな! 鬼たちの居場所と銀杯の在り処を、今占う必要がないからそう答えたまでだ」


 と、仙の詰め寄りを何とかいなし、晴明が続けたその次の言葉は、竜次たち一行の期待を遥かに超えた、思ってもいないものだった。

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