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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第4章 縁の国・平定編(後編)
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第157話 知られざる生態

 震天弓を用いて渾身の矢を放ち体力と法力を使い果たした与一は、体の回復を図りつつ精兵100名と共に、こじ開けた鉄の大門周囲の監視と、万一の場合の退路確保を並行して行うため、その場に残った。縁の国の頭領、昌幸が念を押していたように、(いくさ)に絶対はない。ましてや、待ち受ける敵の強大さが分かっている場合、最悪の事態を想定して対策を用意し、後顧の憂いを軽減するのは定石と言える。


 与一の矢により壊された鉄門の残骸が、無機質に変形して転がっている。細切れのようになった鉄塊から視線を先に移すと、妖気漂う地下に向けて暗闇の広がりを見せる、封印が解けた大門が待ち構えている。咲夜を総大将とする将兵たち400余名は、


「進みましょう、鬼の巣へ」


 銀髪姫の毅然としたよく通る美声の令を受け、大口を開けた大門へ整然と歩み進んで行く。




 あやめが先頭に立ち、『浮き明かり』を使って辺りを照らしながら大門内部の地下へ続く回廊を進んでいたが、しばらく下っていくと意外なことに浮き明かりの出番は済んでしまった。咲夜以下の将兵たちが回廊を下りきった先には、この島のどこに? と思うほどの巨大な地下空間が広がっており、その上部を見上げると、岩で覆われた天井の所々に大きな穴が開いている。その穴から日の光が採り入れられ、地下深くにも関わらず、この空間は活動に不自由ないくらいの十分な明るさが保たれていた。


「妖気は漂い続けているけど、ここは本当に鬼の巣なの?」


 岩石質の地面や壁を天井から照らす、まばゆい日光は神秘的ですらあり、およそ魔が蔓延(はびこ)るイメージと結びつかず、常時冷静なあやめですら判断を迷わせている。咲夜を始めとする他の将兵たちも皆、同様なことを考えたが、地下空間の先に少し進むと、ここが鬼たちの巣である確証が現れ、皆は一瞬で緊張感を取り戻した。


「これは……オーガが発生する母体の文様だね。もう力が無くなってるみたいだけど」


 九尾の狐である仙は、人より鬼たちの生態について詳しいようだ。岩石質の地面には、幾つかの蜘蛛の巣状文様が描かれているのだが、どれもその妖力を失い、文様の線が枯れたように茶色くなっている。竜次が仙に、もう少し詳しい説明を求めると、彼女はこう答えた。


「蜘蛛の巣文様の中心に円があるだろう? この空間と地面から妖力を徐々に集めていくと、オーガが母体円の中で発生するっていう仕組みさ。でも、無限には発生しない。ある程度時間が経ってくると、母体の文様は力を失うのさ」


 妖力を集め、鬼の子を産むだけの文様が存在するとは、この場にいる人の子たちは、誰もそんなオーガの生態を今まで想像すらしたことがなく、当然のように話す仙の説明を聞き、しばし呆然としている。

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