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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第4章 縁の国・平定編(後編)
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第152話 山蝉・川蝉

 縁の国の幹部である与一と守綱は、竜次に戦へ臨む緊張感を思い出させるため、彼に歩み寄り話しかけたわけだが、当の竜次は若干戦を忘れていたものの、完全な観光気分で船の機構を見ていたわけではなく、すぐに心を整え、戦いへのテンションを抜かりなく維持し直した。それを彼の態度から確認した後、与一と守綱は、竜次に向けた信頼の和やかな表情のまま、話題を変えた。


「ふふふ。何にでも好奇心を持てるのは、竜次の長所だな。仁王島に着くまで、もう少し時間がある。四方山(よもやま)話に近いかもしれぬが、あの島がなぜ仁王島と呼ばれているか、その伝承を話そう」

「それは、是非聞きたいですね。敵を知る手がかりになるかも知れないし、どんな(いわ)くがあるのか興味をひかれます」


 何かを説明するとき聞き手が熱心であれば、話し手は総じて嬉しく、やり甲斐を強く感じるものだ。少年のように目を輝かせて話を待っている竜次に、与一は笑顔を向け、仁王島の伝承を語り始める。


「今より遥か昔、アカツキノタイラに縁の国が建国され、年月がまだまだ浅い時代、仁王島に大層風変わりな兄弟の仏師が住み始めた。兄は山蝉、弟は川蝉という名であった」

「ほう、仏師というと、様々な仏像を彫るのを生業としている者でしたな」


 与一の傍らで聞いている守綱にも、それは初耳の話であったらしく、強い興味から思わず相槌を入れたようだ。


「うむ、その認識で間違いない。仁王島にはその昔、オーガが多く蔓延っていた時期があり、それは山蝉、川蝉が住み始めた頃と重なる。そのため、当時の結の町に住む漁民などが島の漁場に近づきにくく、非常に困っていた。しかしながら、山蝉、川蝉の仏師兄弟が、仁王島のとある場所に、2体の仁王像を作り置いたところ、オーガたちは全てとある場所に封印された。当時の結の町に住む人たちは山蝉、川蝉に(いた)く感謝し、その時からオーガたちが巣食っていたその島を、仁王島と敬意を持って呼ぶようになったそうだ」


 つまり、山蝉、川蝉の仏師兄弟が作った仁王像は、鬼たちを封じるほどの力があったという話だ。竜次と守綱は、与一が話してくれた伝承に感心しきりであったが、2つほど疑問点が浮かんだらしく、与一にそれぞれ質問をし始めた。


「とても面白い話で、島を攻めるヒントにどこかでなりそうな気がします。ところで、その話はどうやって知ったんですか? 結ケ原の合戦の後、色々話をした時には、与一さんはそこまで仁王島について詳しくなかった気が……」

「ああ、そのことか。それは簡単なことでな」


 物怖じせず尋ねたいことをそのまま話す竜次の正直さに微笑みながら、与一は彼が納得できるように答え始める。

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