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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第4章 縁の国・平定編(後編)

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第139話 九字の印

 謎の武将の強さについては晴明に十分説明している。「どんな様子であったか」という問いの意味を、竜次とあやめは最初測りかねたが、死ぬか生きるかの激闘をよく思い出した竜次は、晴明が何を聞いているのかやがてピンと来た。


「俺が名乗りを上げた時、その亡霊みたいな武将はニヤリと笑いました。それに、向けてくる刀の刃は容赦なかったんですが、俺たちに対する憎しみや怒りといったものは全く感じられなかった。何か戦いを楽しんでいたような……」

「なるほどな、そうであったか。笑っていたか」


 晴明は、以前から何らかの推測を持っていたが、竜次の今の言葉を聞き、それが確信に変わったようだ。しかしながら、この陰陽師の目は涼やかなままで何一つ変わった様子はない。これ以上謎の武将について、晴明は何も尋ねなかった。また、晴明が謎の武将について今何かを語ることもなく、この話はそこで区切られた。


「さてと。それでは持ち帰った黒曜石の玉を出してもらおう」

「はい、分かりました。これで間違いないですよね?」


 聞きたいことを聞いて急に話を変えた晴明に、竜次たちは少し怪訝な顔を見せたが、本題は課された試練を成し遂げたかどうかである。気をすぐに取り直すと、あやめがまず自分の無限の青袋から黒曜石の玉を取り出し、続いて竜次も同様に取り出した。そして超速子の明かりに照らされ、静かな黒い光沢を見せる2つの玉を晴明の前に差し出す。


「うむ、よかろう。上出来だ。竜次殿、あやめさん、持ち帰った玉の前にそれぞれ座ってみなさい」

「? こうですか?」


 黒曜石の玉の前にきれいな正座で竜次とあやめが座ると、晴明はそれで良いとうなずき、真言を唱え始めた。その真言は正座した竜次の足がしびれてくるほど長かったが、その詠唱に伴い、徐々に黒曜石の玉が放つ輝きが増していく。そして長い真言詠唱が終わり、玉の輝きが最高点に達したその時!


「臨兵闘者皆陣烈在前!」


 九字の印を結んだ晴明は、両手から莫大な強さの青い法力を黒曜石の玉へ向け解き放った! 青の法力は玉のまばゆい輝きに激しく干渉し、太陽のような柔らかく大きな力を持つ光に変換され、竜次とあやめの体にその光が全て吸い込まれていく!


「これは!? なんて暖かい力だ!!」

「凄い……!! 守るような包み込むような、そんな優しい力……」


 竜次とあやめは自分たちの今までと変わらない、しかし確かな力を引き出された体の変化を感じ、それぞれの両手のひらを信じられない思いで見つめ続けている。

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