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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第4章 縁の国・平定編(後編)

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第133話 試練の球体

 初秋が始まりつつある穏やかな日陰の村の気候と同じく、晴明の顔も柔らかく優しいものであったが、その表情のまま咲夜と仙から離れた平原内の場所に立つと、おもむろに厳しく五芒星の印を切った。すると、広い平原の東西南北に、それぞれ地水火風に対応した精神の球体が発生した。土色、水色、赤色、緑色、人間の頭2つ分ほどの大きさがある球体は、属性に応じた色で空中に揺らぎながら浮かんでいる。


「晴明さん、これは?」

「あなたに課す試練だよ、咲夜姫。そうだな、『試練の球体』とでも呼ぼうか。これらの球体をあなたが持つ法力で壊す。ざっくりと言えばそれが修行の内容だ」


 咲夜が今持つ、ありったけの力で法術を使い、大人の背丈ほどの高さに浮かんでいる4つの『試練の球体』を破壊すれば、修行を成し遂げたことになる。つまるところ、晴明はそう説明しているのだが、


「おおよそは分かりましたが……これはどう法術をぶつけたら壊せるものでしょうか? 見たところ『試練の球体』から漂う力は、尋常なものではありませんが」


 理屈は分かったものの、咲夜は修行をどう始めたものか戸惑っている。だが晴明は、柔和な表情を浮かべたまま、何も言わず咲夜と『試練の球体』が浮かぶ広い平原を眺めているだけだ。自分でどうすればよいか気づけということかもしれないが、咲夜は地の球体の前に立ち、破壊の方法を考えあぐねている。それを見かねて、修行のサポート役である仙が、一つきっかけとなるアドバイスを咲夜に話し始めた。


「咲夜ちゃん、4つの球体にそれぞれ対応した属性があるのは分かるよね?」

「はい、地水火風、それぞれの属性に応じた色をしていますし、分かります」

「そうだよね。だったらさ、その属性に対してね、相性がいい法力の属性ってあるんじゃないのかい?」

「あっ!? そうか、そういうことでしたか!」


 仙がくれたヒントを理解した咲夜は、対峙している地の球体にもう少し近づくと、両手を向かい合わせ、風の法力の集中を始めた。


「風刃!!」


 そして、揺らぎ浮かぶ地の精神球に、高速で飛ぶ風の刃をぶつけ、破壊を試みる! その結果、地の精神球は砕け散らなかったが、球体の深くまで、ある程度の傷がついた。破壊のアプローチとして、方向性は間違っていない。そして、法力を集中して使った咲夜は、自分の体についてあることに気づいた。


(体力も精神力も、それほど消耗していない……もしかして、竜次さんが買ってくれた赤珊瑚の髪飾りの効果?)


 九尾の狐の仙ほどの力があれば例外だが、術者が法力を使えばその都度消耗し、体を回復させないと疲労困憊でいずれ法術を放てなくなる。しかしながら、咲夜がその銀髪につけている赤珊瑚の髪飾りの効果により、彼女の体に蓄えられている法力の消耗が緩和されたようだ。

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