第131話 謎の武将との戦い・その2
甲種甲冑装備で強化された瞬発力を使い、一気に間合いを詰めた竜次は、謎の武将の脳天目掛け、渾身の兜割りを放つ! 背後から放ったその凄まじい斬撃は、兜ごと謎の武将の頭を真っ二つに割いたかと思われた。しかし、
「なっ!? 受け止めやがった!?」
完全に背後を取られていたはずの謎の武将は、刹那のタイミングで身を翻し、竜次のドウジギリをかろうじて受け止めた! だが、その力が計り知れないといえども、ほとんど虚を突かれた謎の武将は体勢を大きく崩しており、竜次の刀をさっきのように押し返す余力などない。
「ここだ!! 押すしかねえ!!!」
ドウジギリをドウジギリで受け止められたものの、確かな手応えを感じた竜次は、わずかに見えかけた勝機を逃さず、一瞬の鍔迫り合いから連撃を放つ! 竜次が鬼神の如く振る重い刃に謎の武将は押されていたが、徐々に体勢を整え直すと、逆転の攻勢を竜次にかけ、押し返し始めた!
(これはいけない!!)
このまま一人で斬り結んでいては、竜次が倒されるのは必定である。その状況をあやめは即座に判断し、竜次の危機を救援すべく、謎の武将との間合いを一瞬で詰めると、左からコギツネマルで胴と籠手の隙間へ連撃を放った!
(…………)
さしもの謎の武将とはいえ、縁の国が誇る猛将2人の連携攻撃を受け続けるのは厳しく、竜次とあやめはそのまま呼吸を合わせ、強大な武者の亡霊を押し返す! そしてついに、連撃を防ぎ続けていた謎の武将は再びバランスを崩す!
「オオオォォォオオ!!!」
強敵が一瞬だけ見せた体勢の揺らぎを逃さず、竜次は空いた胴を目掛けて神速の刃を振り抜いた! しかし、どういう反応でこう避けられたのか、謎の武将は刹那の間に身を引き、胴に浅傷を受けただけで最大の危機を回避している!
「化け物……!?」
千載一遇の好機が終わり、絶望感に苛まれ始めた竜次とあやめには、異常な強さの難敵を、こう表現するしかなかった。呼吸を乱しつつも刃を向け続ける2人と距離が空いた謎の武将は、ドウジギリの切っ先を向け、竜次とあやめの命を奪ってくると思われた。だが、
(…………)
無言でニヤリと笑うと、身を引き刀を納め、こちらを向いたまま音も光も発することなく、その場で消えてしまった。消える前に見せた、謎の武将の敵意が無い笑いは、彼が何かを納得したかのようにも2人には思われた。
正に死闘をくぐり抜け、命を拾った竜次とあやめはその場でへたり込み、冷や汗をにじませながら肩で激しい息をしている。