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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第4章 縁の国・平定編(後編)
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第125話 慎ましい微笑み

 山頂が容易には見えないほど標高がある日陰山は、急峻なポイントが多い。しかしながら、晴明の庵がある山麓からは、比較的なだらかな登山道がつけられており、竜次とあやめはその道を使い、日陰山を一定のペースで登っていく。


「ふう。洞窟が登りやすい道を辿って行ける場所にあって良かったぜ。もう少し山の上なら、登るのに道具が必要だった」

「私は急な勾配の山に慣れていますが、竜次さんはこの道がないと大変だったでしょうね」


 登山道を進む途中、妖かしにもオーガにも遭遇せず、竜次とあやめは、大きな空洞の入り口を向け、待ち構えている自然洞窟の前まで、日陰山を登ることができた。山登りに慣れていない竜次は、なだらかな登山道を使ったとはいえ、それなりに骨が折れていたが、優秀な忍びのあやめにとっては、平坦な一般道とそう変わらなかったようで、大して汗もかいていない。


「鍛え方が違うんだろうな、あやめさんは。大したもんだよ。さてと、このでかい横穴に入るしかないわけだが、見るからに暗そうだな」

「明かりは持ってきています。竜次さん、これを持って下さい」


 大きな自然洞窟に入りかかったところで、あやめが自分の腰につけている無限の青袋から、手のひらに収まるほどの白い球体を取り出し、竜次に一つ手渡した。


「軽い球だな。これが明かりになるのかい?」

「はい、私の手を見ていて下さい。こう使います」


 あやめは右手に持っていた白い球体を、おもむろに強く握ったかと思うと、パッと手を広げ、上に軽く投げた。すると、白い球体は明るく輝き始め、あやめの周りをフワフワと漂い浮いている。


「おおっ!? こりゃ凄え道具だな! やっぱりこれも、超速子を利用した道具なのか?」

「詳しい仕組みは私もよく知りませんが、そうなりますね。これは『浮き明かり』という道具です。このような暗所で、両手両足を自由に使う時、便利です」


 竜次があやめに倣い、使い始めた『浮き明かり』は、球体特有の利点を活かし、全方位を同じ明るさで輝き照らしている。しかも、竜次が移動すると、フワフワと後を漂いついて行く。何ともコミカルで便利な明かりだ。


「はははっ、こりゃかわいいもんだな。暗がりにいるのが楽しくなる」

「ふふっ、小さい子に『浮き明かり』をあげると、そう言って喜ぶんですよ」

「えっ?」


 常に冷静沈着なあやめが一瞬見せた、竜胆のような慎ましい微笑みに、竜次は驚き、あやめの顔をもう一度見直そうとした。しかし、その目線の先にあやめはおらず、彼女は広い自然洞窟内の探索を始めていた。

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