第113話 壊れない絆
「竜次、聞いての通りだ。拙者は連理の都を守っていかねばならぬ。咲夜様のことはお前に任せた。大丈夫か? 守りきれるか?」
日本からアカツキノタイラに来た後、上司と部下の関係として、ほとんどの行動を守綱と竜次は共にしてきた。それだけにこれからの行動が別になるのが、守綱にとっては心配でならず、竜次の目を真っ直ぐ見て、その心を確かめている。
「大丈夫ですよ、守綱さん。咲夜姫は、俺が必ず守り抜きます。安心してください」
「うむ……よし! なるべくなら自身を定め、迷わぬようにな」
「はい! 守綱さんも、御館様と連理の都をしっかり守ってください!」
爽やかな男らしい笑顔で、竜次は心強く請け負った。守綱も、頼もしい部下の男振りに笑顔で返す。
(壊れない絆が見えます。美しいものですね)
お互いをかけがえのない相棒として気遣い合う2人のやり取りから、桔梗はどんな貴重な宝石よりも輝く信頼感をその間に見出し、感動のあまり薄く涙を流していた。
(これなら大丈夫)
そう見極めを付け、守綱は竜次の肩に置いていた思いやりの右腕を下ろし、静かに所定の席へ戻った。
論功行賞はその後も続き、守綱が中老に昇格した他、竜次とあやめも昇格となった。2人とも侍大将の役職階級を受領している。
あやめについて少し説明すると、彼女は忍者としての階級も持っている。現在、中忍である。若年でありながら忍びとして天才的な能力をあやめは持っており、上忍に昇格しようと思えば今すぐにでもなれるのだが、多数の部下の管理をする必要が出てくる。上忍に昇格した場合、それが彼女にとって大きな負担になるらしい。また、戦場などの現場で、我が身を使った仕事をする方が、あやめの性に合っているため、あえて中忍の階級に留まっているようだ。
結の町で与一と仁王島の件について皆で話し合い、一定の結論を出していたが、咲夜がその一連の話を論功行賞の後、昌幸に報告している。昌幸はそれを聞き驚いたが、与一と皆が導き出した結論の価値を大いに評価し、結の町と連携して仁王島を注視することを確約した。ここにおいて、結ケ原の合戦における戦後処理が全て完了した。
「それでは改めて主命を言う。咲夜、竜次、あやめ、仙、日陰の村に住む晴明の庵に行き、3つ目の銀杯の在り処を聞き、また、晴明が提示するその他の所用を行って来るように」
『はっ! 承りました!』
縁の国の大方針が決まり、あやふやだった強大な敵の姿が見え始めた。後手を取られてばかりいたが、先手での反転攻勢へと、ここから繋がっていくのかもしれない。




