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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第3章 縁の国・平定編(中編)
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第110話 涼しい風

「はい。例え、残り5匹の強い鬼たちが復活していたとしても、そいつらを全部斬れば、アカツキノタイラが平和になるってのが分かってきました。俺が斬った金熊童子は確かに強かった。残り5匹の鬼たちがどれだけ強いのか分かりませんが、先が見えた分、気が随分楽になりました」


 昌幸、咲夜、守綱は、心にかかっていた(もや)が晴れ、これからどう戦っていけばいいか、その迷いがなくなった竜次の目を見て、それぞれ深く安堵していた。ドウジギリを使いこなし、抜群の剣技を持つ竜次は非常に強い。昌幸たち3人は、彼を配下として部下として、この上なく信頼しているのだが、同時に、豪胆な中に繊細な面がある竜次の性質を、それぞれが知っている。かけがえのない竜次という人を、それだけ皆、気遣っており、また彼は、縁の国でそれだけの存在になっているのだ。




 雨上がりの夏の庭は、天から恵まれた水により暑気払いがなされ、風情良く涼を感じられる。評定の間は縁側の引き戸を開けていけば、広い庭がどこからでも見られる構造になっていた。せっかく良い環境があるのだから涼しい風を入れ、昼餉を皆で食べようと昌幸が指示し、家臣が座り並ぶ部屋の空気を全て入れ替えたようだ。


「おお、これはうまそうだ。あやめがくれた鯵の干物、よく焼けておる」

(…………)


 炊事場を取り仕切る者が気を利かせたのだろう。昌幸を始め他の者は、鯖の煮付けが主菜として膳にあるのだが、幸村の膳だけは、あやめが結の町で土産として買ってきてくれた、鯵の干物が皿に乗っている。独特の香ばしい風味が食欲をそそり、幸村はあやめの方を見て、顔をほころばせた。慎ましい忍びの彼女は、それにはにかみながら微笑み返す。


(喜んでくださった。よかった)


 幸村の優しさは、よく分かっているあやめなのだが、うまそうに鯵の干物へ箸を進める、その若君の姿は、好意を持つ女として、心から嬉しいものであった。


 昼餉の献立は他に、白飯、茄子の味噌焼き、豆腐の味噌汁、白菜の漬物が膳にあり、皆、庭からの涼風を楽しみながら、評定の間で残すことなく、よく食べた。




 皆が昼餉を済ませた後、昌幸は評定の間に、一族の者と、竜次、守綱、あやめ、仙だけを残している。重要な伝達事項が、その者たちにあるらしい。


「咲夜とお前たちは妖狐山に行っておったな。私からの主命であったが、考えていた以上の成果を上げてくれた。咲夜たちが連れてきてくれた九尾の狐の仙殿がいなければ、結ケ原の合戦で勝つのは難しかっただろう。仙殿、本当によく来てくださった」


 平一族は改めて仙に、心からの礼を示した。大霊獣である仙にとって、そいつらを気に入るか気に入らないか、人に対してはそんな価値観しか持ち合わせていないが、いい人間たちのそうした敬意は、彼女も嫌いではない。

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