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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第3章 縁の国・平定編(中編)
105/321

第105話 核心に近づく

 日本でも夏には特有の強い雨が時折降るが、アカツキノタイラにおいてもそれは同様で、今日の早朝から降り続いていた雷を伴う激しい雨が、正にそうであった。しかし、それもいつの間にか止んでいたようだ。


 昌幸は大雨が止み、濡れた深緑の葉から、ポタポタと雫を落とす宮殿の庭木を、離れた窓から通して眺め、一旦言葉を止め、少しの間、微笑みを浮かべた。竜次は昌幸が頬を緩めたのを見て、その意味を考える。


(雨が洪水につながらず良かったということだろう。御館様はそういうお人だ)


 正鵠を射た推測であろう。頭領、平昌幸は、何をおいてもまず民のことを考える。連理の都周辺に広がる広大な田畑には、都付近を流れる長江(ながえ)川から灌漑設備を通して隈なく水を引いており、今日のような大雨が続けば、治水の限界により氾濫することが度々あった。都に広がる田畑のスケールは見晴るかすくらい大きいが、長江川の規模感もそれに見合うほど、非常に広大である。他の意味も含んでいるかもしれないが、昌幸の微笑は、縁の国を支えてくれる農民のことを想い、水害を避けられて良かったという、安堵から主に来ていた。


「そうだな……少し昔話が混じるがよいか?」

「はい。全て聞きます。むしろどのような昔話か気を引かれます」

「はっはっはっ! そうか! では、全て話そう」


 国鎮めの儀式を執り行っている間、昌幸は、幾らか格式と形式が入った言葉を使っていた。そうではあったが、外の大雨が水害につながらなかったこと、竜次がいつも通り正直な当たりの良さで聞いてくれていること、この2つで自身を律していた空気を緩められたのか、先程よりくだけた話し方で、頭領として言葉を続けた。


「私は結ケ原の合戦で勝利した後、オーガの大軍を率いていた大将鬼、金熊童子の名がどうしても頭に引っかかり、先ごろまでずっと考えていた。それが一昨日であったか、連理の都にもうすぐ戻れると緊張が解けた時、すうっと頭にあることが浮かび、思い出したのだ」


 咲夜、竜次、守綱を始め、神事の間にいる者たちは、頭領の次なる言葉を待った。昌幸と幸村が、姿勢を楽にして聞いてよいと、話を始める前に指示しており、皆それぞれ足を崩して座っていた。


「私の父、つまり先代の幸隆が、縁の国が造られた時代、その大昔の話を生前してくれた中に、金熊童子の名が出てきたのを思い出したのだ。先代の話自体はうろ覚えになっておるが、金熊童子の名をそこで聞いたのは間違いない」


 今までなぜ鬼を斬り、どこまで鬼を斬れば終わりが見えるのか、竜次は葛藤を抱えながら戦っていたが、話が一気に核心へ近づいたのを肌で感じ、拳に力を入れ、身を乗り出して昌幸の言葉を聞いている。

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