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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第3章 縁の国・平定編(中編)
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第104話 豪胆にして繊細

「咲夜の身を尽くした祈りにより、また少し、世界を覆う空気が穏やかなものに変わった。皆もそれを、心と体で実感していると思う。だが、まだ十分ではないようだ。アカツキノタイラ全体の瘴気を晴れやかにするため、残り5つの銀杯を集めねばならぬ」


 国鎮めの儀式が終わった後、昌幸は愛娘である咲夜の疲労困憊が、幾分回復するまでしばらく待った。そして、銀髪姫の呼吸が落ち着き、兄幸村の支えなしで座れるまで体が整ったところで口を開き、儀式のとりまとめと、今後、縁の国の頭領としてどういう方針をとるかを、神事の間に居る皆に話す。


「はっ! 承知致しました! ご命令があればすぐにでも国鎮めの銀杯を探し求める旅に出ます」


 そう、確かな心強い声で請け負ったのは、白装束に身を包んだ竜次であった。誠実な彼の心をそのまま表したような純白の衣は、引き締まった凛々しき顔と相まって、昌幸に礼をとる竜次の所作を美しく際立たせる。周りにいる者は皆、その説得力ある男振りに感服し、竜次の心意気と忠誠心を讃える完全な静寂が、神事の間を爽やかに走った。


「ふふふ、ありがとう竜次。そこまで急かずともよい。その心は大変頼もしいが、旅には十分な準備が肝要になる。竜次、お前はアカツキノタイラに来てまだまだ日が浅い、多くのオーガを倒し、我らの窮地を救ってくれたが、そのオーガたちについてはよく知らぬところが多かろう。それで不安になることがあるのではないか?」

「それは……確かに仰せの通りです。俺はがむしゃらに鬼たちと戦い、斬ってきました。しかし、どれだけの鬼を斬れば終わりになるのか、先の合戦では、それを強く思いました。迷いにつながることがその雑念により、これからあるかも知れません」


 昌幸は極めて真剣に、竜次の正直な心を受け止め、彼の目を見つめつつしばらく考えていた。傍らでかしこまり、静かに聞いている守綱も、


(竜次は豪胆だが、繊細な心を合わせ持っておる。そういった悩みを抱えているのも無理はない)


 と、表情には出さず心の内でうなずき、竜次が溜め込んでいた辛さを、言葉として吐き出させてくれた御館様に、彼の直属の上司として大きく感謝した。


「やはりそうであったか。今、聞いておいて良かった。その雑念が全て消えるわけではないが、敵をもっと知ることができれば、お前の心も和らぐだろう。竜次を始め、銀杯を求める旅に出る者たちへ、知らせたい情報がある」


 考えをまとめた縁の国の頭領、平昌幸は、竜次を中心として問題を全体的に捉えると、それを解決していくための言葉を紡ぎ出す。

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