異世界転移の罠! かわいいギルドの受付嬢の裏の顔は必殺仕置人!?俺のハーレム転移に待ったがかかったわけ
R15は念の為です。性癖に関する言葉が少々出てきます。
俺はどうやら死んでしまったらしい。真っ白な空間で不思議な発光体から死亡したこと、本来の寿命と違い手違いがあったため、他の世界で生きることが出来ることを説明されて、地球で生き返ることは出来ないのならしょうがないと別世界での人生を希望した。べつに絶対に捨てたくないような華々しい人生でもない。社畜としていそがしく、彼女も居ないままもうすぐ30歳になる俺の生活もう一度やりなおしたいかといわれると、この先同じ毎日が続くんだったらもういいかな。という程度の執着しかない。
それに何より近頃流行りのライトノベルやアニメで語られていた異世界転移・転生というものが平々凡々だった俺の人生に選択肢として示されるなんて、どうせ死んでるんだ、やってみたいと思うだろう?コンクリートジャングルから冒険の世界へ旅立てるなんて、俺の少年魂がわくわくしちゃうぜ。
異世界転生につきもののスキルというものもつけてくれるというのでそれもありがたく頂いた。言語チートや、冒険者として生きていくための身体能力アップ、あとはまあ異世界転生ものでよくあるスキル系を付けてもらった。残念ながら装備や金銭は支給できないと言われたので部屋着のスウェット姿だが、冒険者登録をして野草でも取ればすぐに小銭は稼げるだろう。そうそう、魔法がある世界ということで魔法の才能が開花するかどうかはこれからの俺の経験値によるということなので、今まで読んだラノベの主人公たちのように独学で創造力を働かせたり学園に通ったり、まあなんとかすることは出来るんじゃないかと軽く考えている。異世界転生ではないので姿形はこのままだということだが、日本人成人男性としては普通の背丈だし、チートもあるし、心配はいらないはずだ。
出来るだけ安全な地域に転移させてほしいと頼んでおいたし、これで転生した途端に死んでしまうようなことはないだろう。不思議な発光体が覚悟はいいかと訪ねてきたので、我ながら用意周到だと自画自賛しながらうなずいてみせた。
発光体が輝きを増し俺の視力を奪う、次に目を開けたとき俺は中世の街のような景色の中に一人立っていた。
おぉぉぉぉーー!!叫びだしたかったが余計な注目を浴びるのも良くないので俺は周りを見渡すと目当てのものを見つけてそちらへと向かった。
冒険者ギルドで登録を無事済ませた俺は宿屋を見つけて1週間ほどの滞在を交渉した。料金は通常は前払いなのだが、明日の朝まで待ってくれるということで一安心だ。対人交渉スキルに魅了で好感度を上げておく。宿屋の毛むくじゃらオヤジの好感度を上げてどうすんだと思わないでもないが余計なトラブルは避けておくにこしたことはないからな。
しばらく部屋でくつろいでいるとドアがノックされた。待ち人来たり!俺は喜び勇んでドアを開けた。先程ギルドで受付をしてくれたかわいい猫獣人娘さんがそこには立っていた。
「アツシさん。来ちゃいました♪」
ウェールカーム♪俺の人生に幸あれ!!
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私はチャム ネコ科獣人族 それなりに異性受けのする容姿だと思います。
仕事は冒険者ギルドの受付です。まぁ接客業に必要な美しさと人好きのする言動は持っています。ふふ。
朝から晩まで冒険者さん達のお手伝いをするギルド職員として真面目に働いてます。主に事務職ですからまあ退屈といえば退屈なんですが・・・
きぃと扉が音を立てて誰かが入ってきました。
あら、新人さんかしら?彼は室内をキョロキョロと見回したあとおもむろにこちらへやってきます。
黒目黒髪の成人男性が受付カウンターの前に立ちます。
「ようこそ。冒険者ギルドへ。私は受付のチャムと申します。何かお手伝いすることはありますか?」
「あの、冒険者になりたいのですが、初めてで」
「ではこちらにお名前などご記入いただけますか?文字の読み書きは出来ますか?」
「はい。大丈夫です」
大丈夫だと言って彼はペンを持ちますが、動きをとめてしまいました。
「あの、知っている文字と違っていて。読めるんですが、ちょっとかけないようです」
「あら、そうなんですね。じゃあお手伝いしましょう。まずはお名前を」
男性からペンを受け取ると私が代わりに記入します。
「アツシです。サトウ・アツシ。家名がサトウです」
「出身地と住所をお願いします。以前冒険者登録されてないですよね?二重登録の際は認識票ではじかれますからね。血液による登録ですからごまかせませんよ」
「えーっと出身地はかなり遠い田舎なんですがそれでも書いたほうがよいですか?」
「?認識票に名前と出生地は記録されますので、もしお亡くなりになるような事があれば出身地へのギルドへ連絡が行きます。お身内の方がいないなら、必要ないといえばないですかね?」
アツシさんの顔をみて首を傾げると、ちょっと固まってしまいました。
ちょっとあざと可愛すぎでしたかね?しばらく見つめ合ったあとアツシさんは目をそらしました。
受付をすませ認識票を発行したあとアツシさんは私の胸のネームタグを見て去っていきました。
いっしゅん笑い出しかけたのを見逃しませんでしたよ。
さてさて、私のもう一つのお仕事の方も始めましょうかね。
さきほどのアツシさんの認識票のデータを端末に呼び出します。
名前、出身地、その他色々飛ばしていくと、いつものように最後の列にあるのは、性癖データです。
ハーレム・猫耳・エルフ・奴隷・人妻・監禁・・・・色々
乙女な私が読むに耐えない彼の夢の世界が広がります。
何でもありの何でも来いですね。
変態さんがまたこの世界へやってきたということで、彼は私のもう一つのお仕事の対象者のようです。
私は席を立つと同僚に交代を依頼してギルドをあとにしました。
「アツシさん。来ちゃいました♪」
そう告げるとでれでれと崩れた笑顔でアツシさんは私を部屋へ招いてくれました。
仕事がしやすくて何よりです。ふふふ。先手必勝!軽くアツシさんの後頭部にチョップを落として昏倒させます。やはりこちらへ来たばかりのようですね。スキルがあっても使いこなせていないので私の敵ではありません。
さぁ彼がおとなしくしている間に処置担当を呼ばなくては。魔法陣の書かれた羊皮紙を取り出します。私の血を垂らすといつものようにスキルイーターに特化したサキュバスが現れました。長い黒髪がうねり露出の多い衣装、いつものように無駄に色っぽい容姿です。以前寝てる相手には見えないんだから関係ないのでは、と言ったら気分の問題なんだと叱られました。
「いつものやつか?」
「ええ、そうよ。精神異常系のスキル、一般人以上の戦闘スキルは一つ残らず食べてもらって、言語スキルは気の毒だから残していいわ。普通の一般人に仕上げて頂戴」
あっという間に仕事を終えてサキュバスは姿を消しました。
さあこれからが私のお仕事の本番です。
やさしくアツシさんを起こして、何が起きたのか説明します。
せっかく異世界にきたのだからチートスキルで無双し、ハーレムの一つや二つを所持しようと思っていたのでしょう、絶望が瞳に浮かびます。
「なんで、俺がこんな目に・・・」
飛びかかってこないだけアツシさんは紳士ですかね。では説明を続けさせていただきます。
「わかります。でも恨むなら、今までこちらの世界に来たお仲間のことを恨んでくださいね。皆さん散々やりたい放題して行かれましたからね。今ではもう異世界からの転生・転移者は皆から害虫扱いされてますよ。男性だけではないですよ、女性も逆ハーとか言って頭湧いてんですかあなた方の国の人達は?王侯貴族は血統主義なんですよ。誰の子かもわからないのに王族認定出来ませんって。
あと、彼・彼女らのおかげで唯一の番を奪われた獣人たちは一生だれとも番えず一人なんです。おかげでただでさえ繁殖率の低い種族は絶滅の危機です!あなた方は転生の際にチート?を授けた神のせいだといいますが、あれは神ではなく転生斡旋業者です。転生者が望んで転生するたびにマージンを取ってるんですよ。簡単に言えば貴方の生命エネルギーをピンはねしてます。いくらでもチートを付けます。その分あなたの寿命削ればいいので。
それに貴方、お気の毒ですが本来なら元の世界で逆転一発の成功人生を歩んだはずの方です。転生前の人生が不遇であればあるほど成功のためのエネルギーが貯められていたんです。それを転生斡旋業者が刈り取ってこちらの世界に移してるんですよ。本当は死ぬはずではなかった。お気の毒な貴方に新たな人生を。次こそは幸せな人生を歩めるようにチートスキルを選ばせてあげましょう。って言ってましたでしょう?
まあ、ハーレムチートを望んでいるのは貴方の本性というか品性ですし。そこはご自分を恨んでいただきたいですね。ご安心願いたいのは、貴方が今まで身につけた知識などは奪われては居ないということです。チートスキルがないと危険な冒険者はせず、皆さん普通に商人などする方が多いですよ。もちろん身体能力に自信がお有りなら冒険者として一山当てることも可能です。ハーレムは無理ですが、普通に結婚してこちらでしあわせに暮らされてる方も居ますよ。大丈夫です。そんなに絶望しなくても住めば都っていうじゃないですか。がんばりましょう」
優しく微笑むとアツシさんは少し元気が出たようです。
「じゃあ、チャムさん。俺と友達になってくれるかな・・・知り合いも居なくて心細いんだけど」
おずおずと言葉を紡ぎます。黒髪黒目の人たちはどうにも物事をはっきり言わないようですね。察してほしい、というところでしょうか。でも獣人族は違うんですよね。
「無理です。貴方私の名前を笑いましたよね。何よりそこが気に食わないので。では冒険者ギルドでお仕事をされるときにまたお会いしましょうね♪」
サクッとお断りして部屋を出ます。一仕事終わったのでしっぽがご機嫌に揺れてしまいます。
私の名前はチャム・ペディグリー。
番を盗まれた獣人族からの依頼で犯罪者予備軍の転移・転生者の能力を狩るのが私のもう一つのお仕事です。
サクッと振られたアツシはひとり宿屋に残された。呆然としているし、涙目である。
ペディグリーチャム 猫まっしぐら、のキャッチフレーズにしかけられた思わぬ罠。
「カルカン派になれってか・・・」
ポツリと呟いて床に倒れ込む、とりあえず明日仕事探そう・・・そう思ったアツシの目から涙が一粒こぼれて床にシミを作った。
頑張れアツシ!君、魔法適性検査はまだやってないよ!!ワンチャン!あるよ! by異空間より転生斡旋業者
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ちなみに不憫なアツシさんですがワンチャンあるかもしれないらしいので、魔法適性検査を受けるといいと思います。頑張れー
最近現実社会で詐欺のニュースを見ていて異世界転移だって騙されたー!ってこともあるかもね。と思って出てきたお話です。甘い話には裏がある。のです。
追記・2021年9月11日
ペディグリーチャムはドッグフードでした。
カルカン 猫まっしぐら というのが本来のキャッチコピーです。
ということに公開後気づいていたのに、読まれていないし まぁいいか、と放置していたらまさかのネット小説大賞一次選考通過しまして、穴があったら入りたい、とはこのことですね。
ポンコツの極みですが、それもこれも私のなろう歴の思い出になるということで、そのままにしております。