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【Decisive battle!Sanada Maru①(決戦!真田丸)】

 ズドーンと言う発射音が何度も山々をこだまする。

「命中しました」

 サポーターの声が無情に耳に届けられる。

 くだらない歓声が上がる。

 まるで自分の放った銃弾に、自分自身が射抜かれたように全身の筋肉の感覚が麻痺して、俺はそのまま動く事も出来ずに立ち尽くす。

 “無”

 心の中が、空っぽで何も考える事が出来ない。

 青い空が俺の心を吸い取り、太陽の日差しが俺を責め立てる。

 “取り返しのつかない事をしてしまった”

 ようやく動き始めた心が、そう叫ぶ。

 しばらく突っ立っていると周囲に幾つもの砂ぼこりが舞い、跳弾の音が響く。

 “雨……?”

 いっそのこと、この雨に撃たれて俺もナトーの後を追いたい。

「ミラン指令!」

 遠くで声がしたかと思うと何者か数人に掴まれ、俺は抵抗する力もなく岩陰に引き戻され、その岩に幾つもの雨粒が当たり誰かがギャーと叫ぶ。

「司令!」

 叫び声と“指令”と切迫した声で呼ばれた事で、ようやく自分が何者であり、ここに来た目的を思い出す。

 雨だと思っていたのはザリバン側の銃弾。

 岩の隙間から見ると、ここからは墜落して壊れたローターと屋根の上部しか見えていないが、勇敢な兵士がその屋根の上に立ち反撃している。

 ザリバン兵にしては射撃が上手い。

 だが自動小銃の連射で800mを超える的を狙うのは、単に弾丸の無駄遣いだ。

 こちらの兵も同じように応戦していたので、止めさせて身を潜めておくように指示すると、案の定目標を見失った敵も撃つのを止めた。

「ミラン司令、指示をお願いします」

 墜落したヘリからの無線では、この直ぐ上に敵のアジトが在るとのこと、そしてRPGにより被弾したとのことだった。

 堕とされた事もそうだが、まったく厄介な所に堕ちたものだ。

 ヘリからの情報が正しければ、ここに立て篭もる敵を見過ごしてアジトを攻撃するわけにはいかない。

 見過ごしたままアジトへ向かうと、少人数の敵とは言え挟み撃ちに合う。

 しかも敵にはRPGがあり、こちらは人数が多いと言っても所詮素人の寄せ集め。

 一旦不利な状況やパニックを起こすと、どうなるか分からない。

 だから常に有利な戦い、不意を突かれない戦いをしなくてはならない。

 これがPOCの弱み。

「本隊を押し上げて、先ずヘリに集中攻撃を掛ける」

「承知しました」

 頼れる部下も部隊もない以上、正攻法で勝利を掴むしかない。


 ヘリの中で、のんびり寝ていた。

 どうせナトーの事だから、休めと言っても休まずに俺の分まで周囲を見張っているに違いねえ。

 だから、俺は戦闘が長引いた時にナトーの代わりに見張るため、こうして寝ていると言うわけだ。

 もっとも、戦闘が長引いて夜になり、それが朝になり昼になろうともナトーは一切気を抜くことは無い。

 突然ズドンと言う音が響き、目を覚ました。

 あの音はナトーのL115A3じゃねえ、M82だ!

 ヘリのどこにも弾が当たった音がしないと言う事は、外したか、それとも鼻からこのヘリを狙ったわけではないと言う事。

 ヘリを狙ったのでなければ、他に狙うところは一つ。ナトーの居る崖の上!

 反撃の銃声は……。

 崖側の扉を開け5秒待っても、10秒待っても、銃声は聞こえない。

「ナトー!」と叫んでも返事は返ってこなかった。

 “ま、まさか……そんなバカな……”

 迂闊だった。

 場所なんて替わるんじゃなかった。

 俺は、のうのうと防弾板で囲まれた場所で寝ていて、ナトーは見晴らしの良い崖の上で見張っていた。

 見張っていると言う事は、敵からも見えやすくから、狙撃手の的になりやすい。

 何故気が付いてやれなかったんだ“この阿呆!”

 自分の拳で頬を殴る。

 しかし自虐をしている場合じゃねえ!

 復讐をしねえと!

 ヘリの屋根によじ登ると、1km程先に誰かが立っているのが見えた。

 この戦場で無防備な野郎。

 屹度、ナトーを撃った事が自慢で、ここが戦場である事を忘れていやがるんだろう。

 なら、ナトーに変わって思い出させてやる。

 タタタタタッ。

 男の周辺で砂埃が上がるが、とても当たるような距離じゃない。

 今度は天辺の下にある“はかり”みてえなヤツの隙間に(コントロールロッドとメインシャフトの間)に銃を突っ込んで撃つと、奴の足元付近に砂埃が上がった。

“ぃよぉ~し、もうチョイ!”

 ところがそのもうチョイの所で、仲間が浮かれた狙撃手を岩の陰に連れ戻し、弾丸は男の後ろにあった岩に突き刺さった。

「チクショウ!もう少しだったのに」

 ここに留まると今度は俺がM82の餌食にされてしまう。

 そうなれば敵討ちは叶わないので、ひとまずヘリに戻って様子を窺う事にした。

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